inasikinohanasi日和

茨城県稲敷市地域おこし協力隊が稲敷について語ります。

田舎と都会の違い――街灯問題――

つい先日、自宅から和田公園まで自転車を走らせた。片道十五キロ。いい運動になると、軽い気持ちでペダルを漕いだが、何やら様子がおかしい。

 

とてつもなく暗いのだ。それこそ幽霊でもでてきそうな。

千葉の市川にいた時じゃ考えられないほどの暗闇だった。街灯もほとんど置かれておらず、自転車のライトがなければ到底一人では進めないほどの闇。

 

人の思い込みとは面白いもので、今まで幽霊なんか見えたこともないのに、草木がざわめくだけで「うひゃひゃい」と叫んでしまう。

 

車の走行ライトならまだましに思える道でも、自転車のライトでは走行不可能になるほど。幽霊のでてきそうな道に、何度屈しそうになって来た道を帰ろうと踵を返したことか。これがライトも何も持ち合わせていない普通の歩行者だったなら……。ぼくなら日が暮れて暗くなった時間に外に出ようとは考えないだろう。

 

街灯の少なさは和田公園も同様だった。昼間はあんなに景色がよくて居心地の良い場所でも、一度暗闇に包まれると、幽霊の巣窟になってしまう。そして、和田公園では暗闇以外にも恐ろしい事象が発生した。何者かの声が聞こえてきたのだ。はじめその声をきいたぼくは、驚くよりも「どうして声が?」という疑問でいっぱいだった。

辺りを見渡してみても誰もおらず、あるのは暗闇ばかりだった。もう一度耳を澄まして、声をきく。

 

「もおー」。

 

完全に人の声ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ウシガエルだった。

 

ウシガエルが鳴き続けていた。

 

 

 

 

 

 

合唱できるほどたくさんのウシガエルが草木に身を潜めていた。それはそれで怖くて、でも幽霊でないことに安堵して、和田公園近くのサイクリングロードを再び走る。先にいったところに、車が一台とまっていた。車種には詳しくないので、何の車かはわからなかったが、怪しい趣がプンプン丸だった。ちょうどゴールデンウィーク始まりだったので、深夜釣りにでもきているのかと周囲を見渡してみても、人っ子一人いない(いたら怖くて逃げだすけれど)。怪しい。怪しすぎる。

和田公園の中にも車が一台置かれていた。ガラスはスモークで中が見えない。怪しい。怪しすぎる。

自宅を出発して、和田公園に着いたのは11時近く。そんな時間に公園へやってきていったい何をするというのだろうか。あやとりだろうか、それともポケモンGOだろうか。

分からないが、何の罪がなくても、暗闇のせいで犯罪者扱いされてしまうのもかわいそうな話だった。

プレイスメイキングで和田公園を「人を呼び込むため」の公園にするなら、この街灯問題にも着手する必要があるのかもしれない。さすがに深夜帯に自転車を転がす愚か者(自虐)はいないにしろ、夜の七時近くですっかり日が落ちる冬場なんかは、街灯が無くては人も寄り付かないだろう。怖いし、怖いし、怖いからだ。

 

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ここで一句

 

田舎はね

たくさんいるよ

ウシガエル

 

ともぞう心の俳句

 

プレイスメイキング――公園づくりが田舎を救う?――

地域に根付くために必要なこと。

居場所をつくる。

 

千葉の市川にいたとき、驚いたことは、その駐車場の多さだった。スーパー、靴屋、その間に駐車場、ラーメン屋、バイク屋、その間に駐車場。大人たちが使いやすいように空間を創造するばかりで、子供たちが遊ぶための居場所は小さな公園に限られていた。

東京メトロ東西線の高架下には保育園が造成された。上では電車がひっきりなしに通過し、両サイドには排気ガスをまき散らす自動車が走行。立地がいいかと言われれば微妙なところで、それもこれもすべて原因は、大人たちが利益重視で、狭い土地にばかすかと建物を建てていったからに他ならない。

 

クレヨンしんちゃんの映画『クレヨンしんちゃん ガチンコ! 逆襲のロボとーちゃん』でもこんな描写がある。野原しんのすけの父親・ひろしはぎっくり腰になってしまい、家族から「邪魔だ」と邪険に扱われる。唯一の居場所を追い出されたひろしは、近くの公園のベンチでうなだれていた。すると、そこには同じような境遇で俯く男たちがいて……。

 

人にとって居場所はものすごく重要なのに、ものすごく軽視されている。

4月24日に行われた和田公園プレイスメイキング(簡単に言うと、稲敷浮島にある和田公園にちょっとしたエッセンスを加えて、人を呼び込む公園にしちゃおうという企画)の会議で、『居場所』の重要性を再認識した。今回のまじめ腐ったブログでは(不本意)、プレイスメイキングについて紐解いていこうと思う。

 

〇プレイスメイキングとは

 

プレイスメイキングはアメリカでうまれた「居場所づくり」を指す言葉。しかし、明確な解釈が存在せず、定義もひとつに限られているわけではない。「すべての人々が住んでいる地域において、自分自身を見つける居場所に変換していく方法」と語るのはLinda. H Schneekloth。研究者の三友奈々は「日常の生活場面をより実在感のあるものにする心的価値をつくり、居場所としての満足感を高め、生活の質を高める計画概念」であると語り、Jay Walljasperは「安全で活発に利用され、コミュニティの社会的活力及び経済を活性化するための触媒となり得るような公共空間を創出するために、コミュニティと協働すること自体もその言葉に内包する」と語っている。

 

簡単に言えば、「快適な居場所を作っちゃえばいいんじゃね? したらみんなハッピーしょ!」ってことだ。

 

〇プレイスメイキングの意図

プレイスメイキングは決して、人を呼び込むために行うものではないことを理解しなければならない。ただ人を呼び込むためならド派手なイベントを催せばいいだけだし、有名な芸能人でも呼べば簡単に解決してしまう話だ。しかし、プレイス=居場所を、メイキング=作るのだから、一過性であってはならない。毎月一定数の来客が見込め、その場所を魅力的に感じ、常に居たいと思わせる空間を作る。第一に優先されることが商業目的ではあってはならないし(市川のように)、利用者を第一に考えた、誰に対しても(野原ひろしのようなぞんざいに扱われる父親にも)優しい居場所を創造することを主眼に置く。

 

〇プレイスメーカーとは

プレイス(居場所)をメーカー(作る人)する人を指す。愛着の持てる居場所作りに邁進し、利用者に唯一無二の居場所を提供するプレスメイキングの専門家のこと。

 

〇プレスメイキング成功事例

・中町公園の『FLAT PARK』

四日間限定で厚木市・中町公園に置かれたのは簡易的な椅子とテーブル、人工芝の絨毯に、本棚のみ。

普段の中町公園は子供の遊ぶもなく、公園と呼ぶよりかは広場に近い様相。しかし上記に挙げた小規模な設営で人が集まり、コミュニティが作られた。

 

・米国ニューヨーク市『ブライアントパーク』

約4500脚の可動式椅子を設置し、六か月の飲食店を経営させたところ、勝手に人が集まり、犯罪多発地区だった公園を賑わせた。

 

・池袋グリーン大通りの『GREEN BLVD MARKET』

洒落た出店を出し、ハイカウンターでは立ちながらビールを飲むことができる。ちょっとした設営でも人が集まり、賑わいを見せる。

 

 

稲敷浮島・和田公園でのプレスメイキング考案

人口減少が叫ばれる稲敷だが、良スポットは数え切らないほどたくさんある。和田公園もその一つで、近くには霞ヶ浦が流れ、緑は多く、生き物たちもたくさん住んでいる。今回、この和田公園を活用して町おこしできないかと考え、プレスメイキングという形で会議が開かれた。

 

・ターゲット

霞ヶ浦周囲を走る自転車乗り

地元住民の方々(特に親子連れ)

 

・自転車乗り向けの案

自転車を置くためのラックを設ける

入りやすい看板を作る

走行に適した地盤づくり

霞ヶ浦を走行する自転車乗りのために給水ポイントを設ける

空気入れなどを無償で提供する

 

・親子連れ向けの案

イベントを企画、運営する

常に活動しているのをイメージづけるため、和田公園専用のフェイスブックを作り、運営する

レジャーシートを置き、座れるスペースを作る(ベンチや椅子だと古くなった時に再塗装やねじの交換が必要になるため、レジャーシートを活用。また、レジャーシートのほうが、首を回さずに周囲を見渡せるため、公園の景色を眺めるのに適している)

遊具には頼らない、運営のいらない遊びをつくる(テントを使用した遊び。夜なら、懐中電灯一つ入れておくだけでも、その明かりで遊ぶことができる)

定期的に、竹とんぼや、ゆらゆらうごくやじろべえ、缶ぽっくり、紙鉄砲、ぶんぶんごまなどアナログで自作できる遊びを、地元の子供たちにレクチャーする

 

両者向け

チューリップだけではない畑の使用方法を考える

 

 

まだ計画は序盤も序盤で、完全始動にまでは至っていないが、人が集まり意見を交わすことで今まで見えなかった問題にも着手することが可能になり、一歩、また一歩と、よりよいまちづくりのため邁進できるだろう。

 

 

和田公園

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江戸崎にある『甲らく屋』を小説風に紹介してみた!

 美由紀は、まっくろくろすけを生成する達人として名が知れ渡っていた(町内レベルで)。

 ひっくり返せばそこにいる。ハンバーグ、生姜焼き、餃子、焼肉etc。焦げという名のまっくろくろすけは美由紀をこよなく愛し、美由紀はまっくろくろすけを忌み嫌っていた。

 いくら母親から教わっても、注意不十分で料理していること自体を忘れ、挙句の果てに「お腹がすいたなあ」と外に出かけ、外食するという始末。その間、火はつけっぱなし。軽いボヤ騒ぎに発展しかけたが、事態に気付いた母親が、生成されるまっくろくろすけの成長を止めたため、天井にまっくろくろすけの大ボスが出来上がっただけで、けが人はいなかった。

 それからは「もうなにもするな!」と半ば強制的にキッチンから離され、美由紀は料理したくてもできない環境に置かれてしまった。クックパッドを眺めては、涙を流す日々が続いた。あの憎き、まっくろくろすけさえ、現れなければ……。

 美由紀は考えに考えた。まっくろくろすけを生成しない方法を、だ。

 料理をしなければ、まっくろくろすけは現れない。なら料理をしなければいい。しかし、料理はしたい。美由紀にとって、料理とまっくろくろすけは表裏一体、紙一重、神羅万象、しゅらしゅしゅしゅ、焼肉定食、バンバンジー。切っても切り離せない絆で結ばれた兄弟のような関係だった。

 そうして思いついた。料理をする場所は、何も自分の家でなくてはならない法律もない。

 料理教室に通おうと思ったのは、そんな経緯からだった。

 

 料理教室初日、美由紀はどきどきしながら教室の扉を開いた。学生時代に戻ったようなワクワク感と、不安。あの子と一緒のクラスだろうか。新しいクラスで仲良くやっていけるだろうか。楽しく一年過ごせるだろうか。扉を開けて、美由紀は唖然としてしまった。

 その料理教室には、すでに男性が八名ほどいた。料理教室は花嫁修業の一環として開かれていると思い込んでいた美由紀は、まず初めに「男、多っ!」と声を漏らしてしまった。初手としては大失敗。クラス替えなら初日にして孤立。男性が多いことを批判的なイントネーションでつぶやいてしまったため、中にいた先住民(男性たち)から冷たい視線を浴び、美由紀はひやひやしながらキッチンの方へと歩を進めた。

 初日に作る献立は、「豚キムチ定食」だった。定員十名のうち、八名が男性、一名が美由紀、もう一人は急用で欠席(どうやらこの欠席した人は女性だったようで、美由紀は歯がゆい思いでこぶしを握りしめた)。男性たちは終始無言だった。料理教室の先生が説明する通り動き、淡々と作業的な料理が続いていく。美由紀は葬式のような重い空気に耐えられなくて、鼻歌を唄ってみた。米米CLUBの『かぜになりたい』。その一見渋い選曲に男たちは度肝を抜かれ、一瞬だけ手が止まったが、重苦しい雰囲気が一変することはなかった。

 そういったわけだから、出来上がった豚キムチは、案の定、全く味がしなかった。無言で作られた豚キムチの気持ちになって、美由紀は心底哀しい思いで涙をこらえた。本当はもっときれいなお姉さんに作ってもらいたかっただろう。すべすべな手で、優しく持ち上げられ、キムチとともに炒められたかっただろうに。

 その時、一人の男性から声を掛けられた。

「『甲らく屋』の豚キムチには到底かなわないですよね」

 今まで「無言の男たち」というひとくくりのグループで彼らを見ていたため、一個体にまで注目をしていなかったが、声を掛けてきた男性は、優しい雰囲気のある好青年だった。敷島大介その人だ。

「江戸崎にある、あの?」

「そうです、ご存知ですか?」

 ご存知も何も、美由紀はあの周辺に住んでいて、毎日のように通い詰めているほどの常連だ。思い出してまたお腹がすいてしまう。

『甲らく屋』。

 弾力のある豚。

 ニラは新鮮。

 キムチの辛みもちょうどいい。

 しかしこの定食の主役は豚でもニラでもキムチでもなく、卵だ。

 一口食べただけで卵の旨みが馬鹿ほどに口に広がる。触感はふんわりふわふわ、羽毛布団以上綿あめ以下ぐらいのふわふわ感。しかし味はふわっとしておらず、直球ドストレートで卵の味が舌を突き刺してくる。卵がおいしい店は何を食べても旨いという根拠のない持論を展開させると、この店のごはんも何を食べても旨いのだろう。事実、美由紀は前にもこの店に魚をたべにきたことがあるが、(詳細は覚えておらず、確かほっけかサバの塩焼きか何かだったと思う。)旨みの根源であるつややかな脂が箸を入れるたびにしみ出して、その様子だけで、これでもかとよだれを垂らしたものだった。

 見た目にも気を使っているのが好印象だった。小鉢に入れられた漬物、豆腐、ひじき、お椀の味噌汁、そのどれもが必要不可欠で腐れ縁の仲間だとでもいうようにフォーメーションも崩さず配置されている。しかもどれも味がしっかりしている。ひじきにいたっては、太さが普通のひじきの二、三倍はあるだろうか。丁寧に丹精込めて作っているのが伺えて、美由紀はそれだけでうれしくなった。作り手も、食べる人の笑顔を想像して調理したのだろう。

「これじゃあ、どれだけ練習してもあそこの店ほどおいしくはできないだろうな」

 敷島のつぶやきに、美由紀は頷かざるを得なかった。

 

「本当におれのこと知らないの?」

 美由紀に声を掛けてきた男はしつこく聞いてきた。あの料理教室にいたのだろうか。敷島以外の七人は、顔にもやがかかったように思い出せない。いたような気もするし、いなかったような気もする。それとも他の場所で……。

「ま、いいや。とりあえず式の予定だけ決めてから帰ろう」

「し、式って、まさか」

「結婚式に決まってるだろ。みなまで言わせるなよ」

 男は強引に美由紀の腕を引っ張った。

 カスミ店内のコーヒーショップに落ち着くと、男はまた口を開けた。

「敷島はもう知ってるんだ」

「何の話ですか?」

「おれたちが結婚することさ。あいつにはスピーチをしてもらおうと思っていて」

 何が起きているのか、全く分からない。美由紀は自分一人だけが世間から切り離されてしまった気がして、『風になりたい』を口ずさんだ。例のごとく、重苦しい雰囲気が一変されることは決してなかった。

 

 

 

『甲らく屋』

所在地:茨城県稲敷市江戸崎甲2146−3

営業時間:11時30分~14時30分, 17時30分~0時00分

定休日:火曜日

電話: 029-892-1266

 

 

 

この物語を初めから見たいならこれを読むべし!

 

 

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ニンテンドーラボが人気らしい。

ニンテンドーラボが人気らしい。

 

Nintendo Labo』は、いろいろな形に組み立てたダンボールとNintendo Switchを合体させ、自分だけのコントローラー「Toy-Con」をつくってあそぶ、これまでにない体験ができるキットです。

動く組み立て説明書を見ながらToy-Conを「つくる」。

Nintendo SwitchJoy-ConとToy-Conを合体させて「あそぶ」。

作ったToy-Conの仕組みを理解してさらなるあそびをつくる「わかる」。

「つくる、あそぶ、わかる」を体験しているうちに、いつのまにか自分だけのあそびを発明できるかもしれません。

 

 

段ボールを組み立てて遊ぶなんて、諸葛亮孔明並み天才的発想。

組み立て方法は手取り足取り、スイッチが教えてくれる。画面をタッチするだけで作れる、動く組み立て説明書と銘打っているだけあって、小さい子供でも簡単に作成可能。鋏を使うこともないので、安心安全。知育にも最適な今商品。

でもなんだかなあ、と、哀しい気持ちになるのはどうしてなのか。楽しくゲームしているんだから問題ないじゃない。でもなあ。このもやもや感は一体何なんだろう。

 

ゲームが嫌いなわけじゃない。

実際、ぼくの子供時代も任天堂さんにはずいぶんとお世話になっていて、一番初めに買ったゲームボーイでは、ポケモンが大流行して、躍起になって「ポケモンゲットだぜ!」と連呼していた。モンスターボール投げまくりの人生だった。

友達と遊ぶのもゲームばかり。秘密基地で集まって、ポケモンバトルしたり、交換したり、ときにはセーブデータを消されて泣いたり。ラジバンダリ。遊びとゲームは切っても切れないN極S極的な関係性。

だからゲームはむしろ好きなくらいだ。

 

今回のラボは、デジタルとアナログの融合を可能にした特例で、まず間違いなく子供たちにはうけるだろう。工作が嫌いな子供なんていやしない。わくわくさんとゴロリを知らない子供なんて子供じゃない。

しかし、引っかかる。なにかが。そのもやもやは、稲敷に住んでいたおかげで解消された。

 

その日、ぼくは江戸崎・笑遊館にて、幼稚園生相手に、紙芝居を読み聞かせていた。三日目ということもあって、初日のように幼稚園生相手にガクガクブルブルすることもなく、難なく一押し事終え、帰ろうとしたとき「笹船作ったことある?」と、唐突に、おば……おねえさまに聞かれた。

ぼくは全くピンと来ずに、「新聞紙で作るんですか?」と見当違いの質問をしてしまったのだけれど、相手は特に気にも留めずに笹船の作り方を教えてくれた。

作り方はいたって簡単だった。笹の葉を一枚用意し、中央に両端を持ってくるように折り曲げ、折り曲げたところに二つ縦に切込みを入れる。切り込みを入れたら、片方をもう片方に折り込む。←説明下手でごめんなさい

その些細な時間を、ぼくはとても楽しんだ。笹船の作り方を知らなかったから、一つ勉強になったのもそうだし、こうして交流が持てたことに「稲敷はいいなあ」と、思えたからだった。

 

ぼくがニンテンドースイッチラボに対して悲しみを覚えたのは、「教えてくれる先生が機械」であることに他ならなかった。親が教えてくれるわけでも、友達が教えてくれるわけでも、おばあちゃんおじいちゃんが教えてくれるわけでもない。機械が教えて、子供が作る。そこには、昔ならあったはずの交流が欠如していて、ひどく無味乾燥としたつまらなさをひしひしと感じてしまった。

 

この現象は違う場面でもよく遭遇する。例えば、松屋やよい軒などの定食屋。チェーン店にありがちな、タッチパネル式の券売機においても、同様のむなしさを感じてしまう。タッチパネルの券売機は急いでいるときには便利だし、店員さんサイドも余計な仕事をせずに済むから一石二鳥なのかもしれないけれど、「機械」が相手だとどうしてもやるせなくなって、コミュニケーションを取ることも酷く億劫になってしまい、「ごちそうさま」も言わずにその場を立ち去ることが多い。機械を介在させるだけで、コミュニケーションを取る場が一つ減ってしまうのだ。

 

昔は「大人と子供」の交流だったのが、今は「機械と子供」の交流になってしまっている。それはそれで面白いし、楽しいけれど、子供時代に受ける影響ってやっぱりすさまじいものがあるから、機械だけに頼って知育するのも違う気がする。大人と子供の交流があって初めて信頼関係が生まれて、人を好きになって、ひいては地域が好きになって……。

 

大人と子供が交流する機会をもっと増やさなければ。

稲敷でやったるで。

 

稲敷郡美浦村にある『あたり屋』を小説風に紹介してみた!

 NBOXから見える景色は田園風景ばかりだった。

 感情の赴くままにアクセルを踏むので、時速はゆうに八十キロを超えていた。ハンドルを切る手にも次第に力がなくなっていって、カーブを曲がる刹那、対向車とあわやぶつかる寸前だった。当たり屋と思われてもしょうがない所業を繰り返して、美由紀は、NBOXを爆走させた。

 行くあてはない。近くを電光石火のごとく疾走し、風をきってすべてを忘れるだけだった。途中、工事なのか、異様に続く渋滞が起きていて、対向車の車もろくすっぽ確認しないままUターンし、別の道を走る。

 車は走行を続け、いつの間にか稲敷から離れ、美浦村までやってきていた。趣のある店に目をひかれ、特にお腹もすいていないのに駐車場に車を停める。

『あたりや食堂』と呼ばれるこの店は、50年以上続く老舗料理店である。座敷に案内され、美由紀は、キャットフィッシュと呼ばれるアメリカナマズを使用した天丼、『霞天丼』をオーダーした。

 見た目はただの天丼だ。ナマズインパクトを求めていた美由紀は「なあんだ」と、独り言を呟いた。

 具材を確認してみる。ピーマン、かぼちゃ、レンコン。地元でとれた新鮮な農産物をフル使用している。これは楽しみだ。美由紀のよだれは壊れた蛇口のようにただ漏れだった。

 そしてとうとうこの丼のドン、ナマズ様をゆっくりと持ち上げる。ずっしりと重い。箸で中を視察してみる。ナマズ様のご登場だ。なるほど、ナマズ様は白身なのか、と美由紀は驚いた。これは美由紀の勝手な思い込みだが、ナマズといえば汚い川に生息しているものと了見していたので、白色がナマズの正体と言われてもあまりピンと来なかった。腹黒だと思っていた友人が、捨てられていた子犬を拾っていたくらいの衝撃を受けた。

 ナマズ様は最後のお楽しみでとっておき、美由紀はまずピーマンのてんぷらを口に入れた。にがみが羽毛布団のように優しく広がっていく。それに相反して、カボチャのてんぷらはフルーツのように甘い。ピーマンの苦みを浄化していく。

 続いてレンコンを食す。レンコンはさもさっき取ってきてすぐ油に通したのかと思うほどシャキシャキとしていた。

 そうして待望のナマズ様を口に放り込む。臭みはほぼ感じない。口に入れて噛み、ふんわりとした触感を感じて、のど元まで下りてきたときにようやっとナマズ独特の臭さを感じるが、それも大した臭みではなく、パクチーなどと同様に癖になる臭みだった。

 この定食には、天丼のほかに、ナマズの練り物が入ったお吸い物がつけられているのだが、こちらのナマズはおそらく好き嫌いがはっきり分かれる臭みで、天丼のナマズ様よりも臭みが強い。しかし決して食べれないほど臭いわけではなく、より近くにナマズ様を感じたいときに適したお吸い物だろう。

 キャットフィッシュ。おお、キャットフィッシュ。フィッシュフィッシュキャットフィッシュ。フィッシュフィッシュキャットフィッシュ。

 これは「あたり」だ。美由紀は歯に詰まった天かすをつまようじでとって、満足そうに店内を後にした。

「ねえ、きみ!」

 呼び止められ、美由紀が振り返ると、そこには見知らぬ青年が立っていた。

「ええ、と。どこかでお会いしたことありましたっけ?」

「本当に覚えてないの?」

「ごめんなさい。会社関係の?」

 青年は答えない。

「じゃあ料理教室で?」

 青年は苦笑い。

「でないとすると、母親のお友達かなにか?」

 青年の眉が曲がる。

「しょうがない。分からないようだから教えてあげよう」

 青年が笑う。

「おれが君の婚約者だ」

「ふぇ、ふぇえ?」

 くわえていたつまようじが地面に落ち、ころころと転がって、この場から一番逃げ出したい美由紀を置いて、排水溝に吸い込まれていった。

 

 

 

 

『あたりや食堂』

所在地:茨城県稲敷郡美浦村大谷1621−1

営業時間:11時00分~20時00分

定休日:火曜日

電話: 029-885-2016

 

 

 

 

この物語を初めから読みたいならこれを読むべし!

 

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追記

稲敷じゃなくて稲敷郡

美浦村は金持ち村らしい

あーあ。宝くじ当たんないかな。買ってないけど。

 

 

稲敷駒塚にある『グリーンヘブン』を小説風に紹介してみた!

 ひいき目に見ても、大惨事は必至だった。

 県道49号線に引かれたブレーキ痕は、弧状に広がり続け、反対車線を走る車を何とか回避しながらガソリンスタンドの看板に大きなひずみを加えた。整体院から女性客が出てきたかと思えば、耳を防ぎたくなるほど明瞭な悲鳴声を上げ、ガソリンスタンドの店員はノズルを地面に落とし、口をあんぐりと開けるばかり。

 当の車は、蜘蛛の糸を張り巡らしたくらいでは済まない程度の亀裂をフロントガラスに刻み、運転手の白けた顔が丸見えだった。

 名も知らぬひょろひょろ男が瓜田に近づいた。口を開けて喋っているようだが、耳鳴りのせいで瓜田には全く聞き取れなかった。

「――ですか?」

 口の動きだけで推測するに、だいじょうぶですか? とほざいているのだろう。いったい誰のせいでこんな悲惨な目に遭っているか、このひょろひょろ男は分かっているのだろうか。

 右目だけで伊奈帆を見た。左瞼は血で覆われて開けることができなかった。痛みはないのに、脈打つたびに傷がうずいてしょうがない。

 伊奈帆は人違いかと疑心するほどひょうひょうとしていた。相変わらず穿いているスニーカーは真っ白で、タイトパンツには皺ひとつない。表面ばかり気にして奥まで読み取ろうとしない、彼女の性格が着ている洋服にまで転移していた。

「救急車!」

 声を上げたのはなよなよ男でも、伊奈帆でもなく、その辺を歩いているソバージュのおばさんだった。

「はやく! もうなにしてんの!」

 目の前の若者二人が使えないとみるやいなや、おばさんは懐から自身のスマホを取り出して、救急車を呼びだす。次第に瓜田の前には人が集まってきていて、道路は通行止め状態。クラクションが鳴っても気にするそぶりも見せない。そのうちに怒鳴り声がして、瓜田は頭をおさえずにはいられなくなった。ミミズが這うように、鈍痛が頭に巡っていく。

 救急車がやってきたのは、それから二十分してからだった。どうやらこの通行止めのせいで足止めを食らっていたらしい。担ぎ込まれてすぐに救急隊員が息をのんだ。通行人のワイシャツをぐるぐる巻きにして何とか止血していたものの、今となっては真っ白だったそれも、真っ赤に染め上げられている。遠のく意識を無理やり起こすことはもうできそうもなかった。

 

――という想像を、車道に飛び出した瓜田は、一瞬のうちにして見せた。甲高い急ブレーキ音が、鼻先をかすめていく車体を引き連れ、後方へと流れていく。動くものすべてがスローモーションに感じられた。死の間際に思い返すことといえば、背中毛多し・百夜の背中毛の長さと、『グリーンヘブン』にあるE弁当のことばかりだった。

 7~80代くらいのおばあちゃんが揚げ物を揚げている様子も同時に思い起され、瓜田は何故だか泣きたくなってしまった。

 E弁当は簡単に言うと男向けの弁当だ。暴力的なまでの肉祭り。神輿をかついでわっしょい、わっしょい。色合いなど気にしない。栄養素など捨て置け。ごはんに合うおかずさえあればいいのだ、という男の欲望のど真ん中を射抜くこの弁当は、ごろごろと評するにふさわしい唐揚げが二つと、分厚いハンバーグがでんと置かれている。唯一の色彩、緑のキャベツは、ボリューミーな肉の下敷きになっており、小さな弁当国における奴隷関係が見事に表現されている。ナポリタンでさえもそのようなぞんざいな扱いをされているのだから、キャベツの出る幕はない。脇役中の脇役、サスペンスドラマなら、初めに死体としてでてきた登場人物Aの友人Bと恋仲にあるが今はただの他人同士のCくらいに脇役だった。

 まず唐揚げを食す。一口では到底食べきれない程度の大きさで、瓜田は顎が外れる思いだった。顎関節症が彼の悩みでもあった。味はいたって普通の唐揚げで、普遍的だからこそ、懐かしい思いに浸れる、あの十五の夜。盗んだバイクで走り出す。行き先も分からぬまま。自由になれた気がした。十五の夜。

 続いてハンバーグを食す。こちらもどこかで食べたことのある、安心感で満たされるデミグラスソースを使用しており、懐かしい思いに浸れる、あの十五の夜。覚えたての煙草をふかし。星空を見つめながら。自由を求め続けた。十五の夜。

 仲間たちがだんだんと遠のいていく。結婚し、子供ができ、親父になる。もう十五の夜には戻れない。瓜田にはグリーンヘブンのE弁当は少し塩がききすぎて、いつも「しょっぺえなあ」と、霞む視界を空に向けながら、またご飯をかき込むのだった。

 

 瓜田を轢きそうになった車の運転手はなんとかハンドルを右に切って、ガソリンスタンドの中へ入ると、ブレーキを目いっぱい踏んで停車させた。目は血走り、口からはよだれが出ている。すぐに窓があいて、「死にてえのか、あほんだら!」と怒声。瓜田はといえば、昔の血が騒いで言い返しそうなものの、あまりに急の出来事だったため声が出せず、足は震えるばかりだった。

 やはり十五の夜には戻れないらしい。大人になった瓜田は、命あることをただただ感謝し、静かに地面へへたり込んだ。

 

 

『グリーンヘブン』

所在地:茨城県稲敷市駒塚601−2

電話:029-892-1250

営業時間:?

定休日:?

 

 

この物語を初めから追いたいならこれを読むべし!

 

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追記

最近写真撮るの忘れること多し

ちなみにE弁当の本体価格は550円。

大盛は+50円とロープライスで販売されているよ。やったね。

 

幼稚園生相手に大の大人があたふたした話

稲敷市江戸崎『笑遊館』にて開催されるこいのぼり祭りに、三期生の地域おこし協力隊が紙芝居を見せにいきます。

お相手は幼稚園・保育園の年代なので、果たしてどうなることやら。静かにもくもくと紙芝居を見ている感じなのか、騒ぎに騒ぎ、いきり立っているのか、「このくそやろう。ひっこめこんにゃろう!」と、ヤジを飛ばされるのか、行ってみないことにはわからない。

 

そんなことより、若干緊張しているのは何故だ。手から汗がとまらんぜ。失敗を何より、も恐れてるぜ。逃げ出したいくらいには。大の大人が幼稚園生相手に震えあがっているぜ。でも地域おこし協力隊として活動するからには、初任務はきちんとやり遂げなくては。

 

ちなみに、前回の文章から推敲したのがこちら。

 

 はなみずズーズー。はっくしょん。咳はゴホゴホゴホのまなぶくん。

 いつもはおうちのベットで眠っていますが、今日は待ちに待ったお出かけの日。

らんらんらん! お母さんといっしょにすっきぷしながら公園へむかいます。

公園には川が流れています。きらきらきらきら、輝いていました。

「わーいわーい!」

ぴょん! 川で何かが飛び跳ねました。

「うわあ、なんだろう?」

ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん!

「こいだ!」

まなぶくんは大喜び。でも、こいの様子が変です。ねずみ色の小さな棒が刺さっているのが見えました。

「釘だ!」

 ぴょんぴょんぴょんぴょん!

こいは何度も飛び跳ねます。

「ちょっと待ってて。今行くから!」

水の中へドボン。はなみずズーズー。はっくしょん。咳がゴホゴホ。それでもまなぶくんは、がんばってこいの元へと向かいました。少し怖かったけれど、こいの体に触れて、釘を抜くまなぶくん。

すると、どうでしょう。こいはすっかり元気になって、川を泳いでいくではありませんか。

「いっぱい生きてね」

泳いでいくこいを、まなぶくんは手を振りながら見送りました。

 

すいすい、泳ぐよ、こいくんは。

まなぶくんに釘を引っこ抜いてもらって、すっかり元気なこいくん。

「あのやさしい男の子にまた会いたいなあ」

「あの子なら、もうずっと、家から出ていやしないよ」

一匹のカラスがこいくんに向かっていいました。

「それならどこの家か知ってるのかい?」

「そりゃあもちろん」

 カラスの教えてくれたおうちまでスイスイスイ。男の子はベットで眠っていました。

「もう治らないって」

 カラスが悲しげに言いました。

「治らないって、何が」

「あの子の病気さ」

「そんな……」

「一つだけいい考えがあるんだけど、聞くかい?」

もったいぶって言うカラスを、こいくんは急かしました。

「そんなに焦るなって。病気が治る花があるんだ。どんな病気でもぱっと治っちまうような、ものすごい花さ」

「それを取ってくれば、あの男の子の病気は治るんだね?」

「もちろん」

 

スイスイスイスイ。急いで泳ぐよ、こいくんは。カラスの教えてくれた滝は、とっても大きい滝でした。あまりにも大きすぎて、こいくんは、

「うひゃあ!」

 と驚いてしまいました。花はこの上にあると、カラスは言っていました。

こいくんは、「いくぞ!」と声を出して、おっきくジャンプ!

やった! 大成功! でもすぐに、落っこちてしまいます。

もう一度、ジャンプ! じゃんぷ! 大ジャンプ!

何度やっても上手くいきません。こいくんはいやになって、

「ぼくにできるのかなあ」

 と泣きたくなってしまいました。

でも、こいくんはがんばります。まなぶくんの笑顔を取り戻すためです。そう簡単には諦めきれません。

もう一度、思いっきりジャンプ! ジャンプしては落ちて、ジャンプしては落ちて。

 こいくんが滝の半分まで登るころには、日もすっかり落ちた夕方になっていました。

「やったやったやった!」

頂上までたどり着いたこいくん。花はすぐ近くです。口で花をもぎ取ると、こいくんは真っ逆さまに滝を落ちていきました。

 

まなぶくんはずっと、家の窓から外をみていました。「たいくつだなあ」と、独り言を呟いたそのとき。

ぽちゃん。

外で水が跳ねる音がしました。外へ見に行くと、何かが落ちていました。一本の小さな花です。手に取ってみると、まだ湿っていました。

「まなぶくん!」

「だれ?」

「ぼくだよ、こいだよ。あの時は助けてくれてありがとう! 花を取って来たんだ。ちょっと苦いけど、病気が治るんだよ。外にだって、いっぱいでられるんだ」

「本当に?」

「本当さ。だから早く!」

 まなぶくんは嬉しくなって踊り出しました。右足を出し、左足を出し、わんつー、わんつー。こいくんもまなぶくんの動きに合わせてひれを動かします。まなぶくんとこいくんはずっと、踊り続けるのでした。

 

 それから、まなぶくんの病気はすっかり良くなって元気いっぱい。いつでも遊べるようにと、こいの形をしたこいのぼりを作って、おうちの庭に飾ることにしました。

 すいすいすいすい。そよ風に揺られてきもちよさそうに泳ぐこいのぼり。おっきな空にとけこんで楽しく笑っているようでした。

 

 

 

 

 

そんなこんなで、行ってまいります。

 

 

庁舎帰宅後……。

 

 

どっと疲れた。顔中あせだらだら。

 

 

だらだーらだーらら。

 

 

でも、みんないい子で本当によかった。お腹痛くなった。これはおそらく緊張のためではなく、男の子に殴られたせいだ(全然痛くはなかったよ笑)

 

反省点は登場人物によって声色に強弱がつけられなかったこと。まなぶくん、こい、カラス、セリフ以外の地の文を読むナレーションを、全く同じトーンで読んでしまったため、幼稚園の子たちにわかりづらかったのではないかと。

明日もまた二組、同じ内容の紙芝居を読む予定なので、今度こそわかりやすく読めるようリベンジや!

 

 

 

江戸崎『笑遊館』

所在地:茨城県稲敷市江戸崎甲2711

営業時間:10時00分~17時00分

電話: 029-892-2117

 

 

追記

推敲文載せてかさまししているとか言わない。

写真はあとで載せます。

 

 

 

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