inasikinohanasi日和

茨城県稲敷市地域おこし協力隊が稲敷について語ります。

地域おこし初任者研修に行って考えさせられたこと

千葉市幕張新都心線の隣接地からバスに揺られ、十分程度。やってきたのは……。

 

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 市町村アカデミー

 

 

16日から18日の三日間、この要塞に閉じ込められ、痛めつけられ、ひどい仕打ちを受けるのだろう。

ガクブルしながら入館。さすがに鞭をもった鬼教官はいなかったが、ここで心を許したらいつ取って食われるか分かったものではない。気を抜くことなく、午後から始まる講義に臨んだ。

 

初日の講義は三つ。全てを紹介するのは忍びないので、特に印象に残った箇所を抜粋して紹介したいと思う。

『地域づくりをサポートする外部人材に求められる役割』と題して、徳島大学総合科学部の田口太郎先生が行った講義では、「地域おこしとは何たるか」という一番あやふやな部分を定義づける説明がなされた。

日本全体をみても人口が減ってきているのに、地域の人口流出を防ぐのは困難だとして、地域おこし協力隊の存在意義を1.地域に「やる気」と「自信」を創出させる。2.外の目線で再評価し、価値化する。3.行政だけではなり得なかったネットワークの接続により、様々な連携が生まれさせる。

とし、「地域おこし協力隊」=「人口増加集団」ではないことを説明した。

 

同じ場所で同じことを繰り返していくと、そのこと自体がいつの間にか当たり前になってしまって、「誰でもできることをやっているんだ」と自信を失っていくことが往々にしてある。例えば、長野の自治体で働く地域おこし協力隊は、ある日、尋ねていった民家で、一人のおばあちゃんが慣れた手つきで竹籠を作っているのを見て度肝を抜かれたという。その技術力があれば、ビジネスにつなげられると考えた地域おこし協力隊は、そのかごをネットショップに出品した。おばあちゃんからしてみれば、「いつもと変わらない日常」なのに、地域おこし協力隊という『新しい目』が介入することで、ただの日常が価値化する。事実、そのかごは売れに売れ、今度度肝を抜かれたのはおばあちゃんのほうだった。

地域おこし協力隊に出会うまえのおばあちゃんは、自分の作ったかごが売れるわけがないと思い込んでいた。しかし、地域おこしに出会い、ネットショップに出品し、自分の作ったかごにお金を払う人が増えていくと、「自信」がつき、「やる気」に転換されていった。人口流出を防ぐ術がなかったとしても、こうした活動を通して、人の意識を変えることは可能だということ――もしかしたらそれが地域おこしの本質なのかもしれない――を、今回の講義で学ぶことができた。

 

二日目は、地域おこしにまつわる様々な問いに対して、グループで意見を出しあうワークショップを行った。

 

『行政から「何をしてもいい」と言われた。地域おこし協力隊として何をする?』

という問いに対し、自分たちの班では、

 

・まず地域を学ぶ

・地域のキーパーソンを見つけて、お話を伺いに行く

・地域を回って、住民の方と話す

・自分が何者であるか地域の人に知ってもらう

消防団など地域の住民の方とつながりを持てる場に参加

・地域おこしの先輩がいればその先輩に付き添う

・あいさつ回りなど、能動的に動く

・周りに相談

SNSなど情報発信

・奴隷にならない程度に仕事を請け負う

・自分のやりたいことを地域に向けて発信する

 

といった意見が出た。

 

また、『自分のミッションについての行政の説明と、地域の人の考えが食い違っていた。そのとき、どうする?』という問いについては、

 

・第三者の意見を取り込む(テレビ、新聞を呼んで)

・行政と地域との会合を開く

・場合によっては目標を変える

 

 

『ところで、地域おこしって何?』という問いに対しては、

 

・人と人を繋ぐ

・地域の外の人とのネットワークづくり

・地域の価値をビジネスにつなげる

・地域を有名にすること

・ファンを作ること(ストーリを作る)

イノベーションすること

・宣伝する必要なく広める

・魅力を自覚し、売り込むこと

・地域おこし協力隊が必要なくなるくらい、住民が地域おこしに積極的になる

 

といった意見が出た。特に「地域おこし協力隊が必要なくなるくらい、住民が地域おこしに積極的になる」というのは、さきほど紹介した長野の事例にもつながってくるように思う。「かごが売れる」と、自分の作ったものに価値を見出したおばあちゃんは、あとはその売り方さえ教えてしまえば、勝手に事業を展開していくことだろう。地域おこしの仕事は、一回こっきりのワークショップを開くことではなく、その後を見越した活動が大部分を占めてくる(今回の研修で一番学んだことは多分これ)。

 

今までの僕は「人を呼び込むならイベント開けばいいでしょ」みたいな安易な発想に帰結していた。たしかにそれで一瞬は地域が活性化したように思うし、活動したことで満足感は得られるし、人を呼び込むための材料としては申し分ないのだろうけど、「それで仕事おーわり!」は許されない。三年間の任期を終えてからも、地域はそのあとも続いていくし、住民は変わらずそこにいる。

 

とりあえず今自分にできることは

 

定住に向けた事業を見つけ、

地域おこしとしても活用

すること(なんだかフワッとしている)

 

……と、いろいろと考えさせられた研修でしたとさ。

ライスミルクなるものが稲敷で作られているらしい(後編)

行ってまいりやした!

噂のスクールファーム略してスクーファ。

 

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写真(学校扉前)

 

スクーファ内は廃校の学校を使用しているため、内装は完全に学校そのもの(当たり前ですが)。面白いことに水耕栽培をしている部屋の入り口には「六年生」と書かれた看板が(写真を撮るのを忘れてしまった。残念)。

 

 

学校然としたスクーファ内を探索していくと、なななんんと!

 

 

室内の中にプレハブ小屋が建っているではないか!

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なんだか研究室のラボみたい。中には二、三名の防護服を着た人たちの姿が。うまいこと写真が取れなくて恐縮ですが、上からお米を入れて、下にある石臼でそのお米を砕いて粉末状にするそうです。

 

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写真(粉末ライスミルク

 

濃い、薄いの差もあるようで、今回見せてもらったライスミルクの粉末は、大きく「濃」の文字が。液体(ミルク)にするときに、この濃さの調節をして味を一定に保つと思われます(聞きそびれた)。

 

今説明した過程でできたライスミルクを加工し、生乳など乳製品を入れて食べやすくした製品がこちら!

 

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写真(maice)

 

お米のmaiとアイスのiceで『maice』。パッケージもなかなか洒落ていて、インスタ映えしそう。写真上記に筑波大の文字が見えますが、これは、筑波大学の農産食品加工研が、稲敷市のバックアップにより開発した※生ライスミルクを使用しているから。いろいろな人たちが丹精込めて作ったアイス、早速、実食!

 

※生ライスミルク

玄米と水だけを原料にしてできた植物由来のミルク。殺菌した生のお米に水を加えて挽き、そのまま液体にしたもの。生ライスミルクを製造しているところは数少なく、稲敷のスクーファはその数少ないうちの一つ。

 

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写真(maice)

 

食レポ。美由紀たちに登場してもらいたいところですが、ちょっくらやってみましょう!

 

まず一口めの風味は完全に普通のアイスクリームです。玄米を砕いて液状にしているためか、舌触りは若干ざらざらとしていて、アイスでありながら舌にお米を感じることができます。なかなか美味。喉元を通りすぎる間際、アイスの中にかすかなお米の風味を感じ、そこにライスミルクの真骨頂を垣間見た気がします。アイスでありながらお米。お米でありながらアイス。両者の良さを思う存分発揮したマイス。しかしながらここで一つ注意点が(マイスだけにマイナス点)。このマイス、原材料にお米が使用されているため、冷凍庫から取り出した直後だと固くなりすぎて(デンプンの影響なのか?)スプーンですくうのが非常に困難な代物となっております。なので、冷凍庫から取り出した後、常温にさらしてから食すのをお勧めします。

 

スクーファではほかにもアレルギーフリーの『生ライスミルクプリン』を製造しており、このプリンにはアレルギーフリーとは別に、チョコレート味とカスタード味があって、バリエーション豊か。また現在は製造していないそうですが、生ライスミルクドリンクなるものもあるそう。これはライスミルクに牛乳を加え、飲みやすくした飲料で、苦いのが得意ではないお子さんにもピッタリの商品となっております。

 

まだまだ世間に知られていない生ライスミルク稲敷を広めるための要素として使えないものだろうか。ちょっくら考えてみます。

 

 

前編はこちらから!

 

mohou-miyabe.hatenablog.com

 

ライスミルクなるものが稲敷で作られているらしい(前編)

 

 

人口減少が叫ばれる昨今(ブログの入りが重い)、私たちにできることは何だろう(いったい何があったというのだろう)。

稲敷も例外ではなく、毎年約700名近くの人口減少が続いている。このままでは4万人いる住民が、何十年後かには(すごいざっくり)過疎地域になり、また何十年後には(オーザック)、人っ子一人いない町になってしまうのではないか。

 

いやだめだ!(どうした急に)

まず働く場所を設けなければと、調べたところ、稲敷にも働く場所はたくさんあったのです(茶番終わり)。

 

 

 

School×Falm=schoofa(スクーファ)

人口減少のため廃校になってしまった学校を借り入れて、そこで最新鋭の省エネ型LED照明による葉物野菜の水耕栽培(養液栽培のうち、固形培地を必要としないもののことをいう)や、地域に根付いた農産加工品の製造に励んでいる会社。

 

水耕栽培(例)

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 ↑

ちなみにこの写真はスクーファで撮ったものではありません。

 

 

スクーファで作っているものは、

野菜類では、

フリルアイスレタス

小松菜

バジル

サンチュ

グリーンサニーレタス

 

農産加工品では、

バジルペースト

 

 

 

ライスミルク

 

 

 

 はて、

 ライスミルク……だと? 

 

ライスからミルクが取れるとでもいうのだろうか。そんな馬鹿な話があるわけないと、そうお思いでしょう。そこの奥さん! そうあなた、です。今呼びかけられて驚いた顔をしたあなた。あなたに直接呼びかけています。

 

このライスミルク。その名の通り、お米から作られます。米の粉末を基本として、それに水を加えた、至ってシンプルな原材料で製造されています。また、一般的には玄米から作られるため、玄米ミルクとも呼ばれているのですが、奥さん、今の説明を聞いてどう思いましたか。

 

カロリーが少なそう? 正解です。

 

今ダイエット中の奥さんにはぴったりのライスミルク。100g当たりのカロリーはなななんと、46カロリー。牛乳の場合は67カロリーなので、500㎖飲もうと思ったら、その差は……電卓がないので後で調べておいてください、奥さん。

 

奥さん、ああ奥さん。奥さん。驚くのはまだ早いのです。

 

牛乳を飲むとお腹を下す人がいますよね。牛乳を飲むとお腹にガスがたまって、ゴロゴロ雷を落としたり、下痢したり。乳糖不耐と呼ばれる作用なのですが、ライスミルクならそんな心配は無用。米をいくら食べてもお腹を下さないように、ライスミルクはどれだけ飲んでも乳糖不耐にはなりません。

今まで牛乳の匂いが嫌いで飲めなかったというそこの奥さんにも、ライスミルクなら問題なく飲むことができます。牛乳のように舌触りになめらかさはあまりなく、どちらかというとさらりと飲める優しい口触り。

パンケーキにシリアル、ホワイトソースにコーヒーなどなど、牛乳を使用しなければならない機会は多分にあります。ですがそれらもライスミルクに変えることで、牛乳嫌いの人も無理なく飲み食いできるだけでなく、カロリーもオフされるという優れもの。

 

そこで今回は大盤振る舞い。奥さんのためならえんやこらえんやこら! ふだんなら1リットル六本入りで535円のところ、今日限り、十二本買っていただけた方限定で、なななんと800円! 800円ですよ、奥さん! 今だけ限定! もう買うしかない!

 

先着100名限定!

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いますぐお電話を!

 

 

 

 

 

そんなライスミルク、実はアメリカではとっくのとうに流通していて、日本でも2013年に初めて国内生産されました(ライスオーラ)。

そして、そして、まさかまさかの茨城県稲敷市でもライスミルクが製造されているということで、株式会社スクーファに行ってまいりやした。

 

 

 

 

こぉはんへぇーつづく。

和田公園をもっと「愛される公園」にするために

稲敷市・和田公園を活気ある公園にする活動として、以前も記事にした和田公園プレイスメイキングが企画・実行されています。

 

 ↓

mohou-miyabe.hatenablog.com

 ↑

 

 

そんななか、地域おこし協力隊員として自分にも何かできないかと、『七夕笹船祭り』を企画しました。今回のブログではその内容について紹介しようと思います。

 

 

 

『七夕笹船祭り』概要

  • イベント内容①

笹船を作って、遊んで、流しちゃおう!

七夕といえば笹、ということで、幼稚園・保育園生を相手に、笹船の作り方をレクチャー。わいわいと楽しみながら笹船を作り、最後には出来上がった沢山の笹船を和田公園近くの霞ヶ浦に流す、という内容。

 

  • イベント内容②

五色そうめんを堪能!

流しそうめんに使う装置を自作(または可能であれば、竹を用意して、地元の方と一緒に作成)し、公園に遊びに来た方々に五色そばを食べてもらう。また、そばを流すために使用した竹の装置は、その後、作った笹船を流すために使用する。

 

  • イベント内容③

みんなで短冊書いちゃおう!

七夕の定番、短冊に願い事を書いてもらう。

またその短冊を残しておくことで、のちにやってくるであろう市外の人に、和田公園の良さ、稲敷の温かみみたいなものを感じ取っていただけるのではないかと考える。

 

  • イベント内容④

天の川を見てみよう!

家庭用プラネタリウムを使用した天体観測。和田公園内にてテントを立て、その中で少人数の天体観測を行う。

 

 

イベント内容④に関しては、人口減少対策室の予算の都合があれば、ということで実行可能かどうか今の段階では微妙なところ。しかしながら、それ以外の上記三つについては可能なようなので、特に問題はなさそう。

 

これからも継続的に和田公園のプレイスメイキングは続いていくようなので、時折このブログでも紹介できればと考えています。

 

 

4月にはチューリップが咲き乱れる和田公園

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霞ヶ浦が隣接し、バス釣りもできる和田公園

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サイクリングロードも完備、自転車乗りにもやさしい和田公園

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どうだ!これが!稲敷の和田公園や!!!!

稲敷の名所を小説風に紹介してみた!

「この人ストーカーなの」

 と、伊奈帆はつぶやいた。

 車に轢かれそうになってその場に倒れ込んだ男を指さし、敷島に抱きつく。

「わたし、こわくてこわくて……」

「は、はぁ……」

 

 今日の敷島は朝からさんざんだった。

 ヤンキーに絡まれ、殴られ蹴られ、彼女には逃げられ、美少女に助けられたかと思いきや、会った時から訳の分からないことばかりしゃべり続けている。その腕には、リストカットらしき傷跡があった。

 とにかくこの場から一刻でも早く逃げ出したい。敷島の本音は、そのやるせなく口の開いた顔からにじみ出ていた。

「とにかく! 無事誰もケガすることなく一件落着したんだから、今日のところはみんなにこやかに解散しよう! にっこにこー!」

「いや、まだ話さなきゃならねえことがある!」

 屈強な男は、九死に一生を得た直後だというのに、少しも弱みを見せない強い語気でいった。

「伊奈帆、その男はだれだ!」

「なんでストーカーさんに教えなくちゃいけないの?」

「はあ? ストーカー?」

「ここ最近、ずっとうちの近くでうろうろしてるでしょ!」

「そりゃあ、お前からの連絡が途絶えて、なにかあったんじゃねえかと心配になって……だな」

「信じないで!」

 蚊帳の外にいた敷島の腕をつかむ伊奈帆。

「初めは郵便受けに手紙が入ってて、私宛に。でも消印もなにもないから、直接郵便受けに入れたんでしょう。どうやって私の家を知ったの?」

「どうやっても何も……」

 屈強な男に、初めて狼狽が見えた。

「私、知ってるんだから。あなた、警察に追われてるでしょ!」

「あ?」

「窓から見てたの。しつこくやってくるあなたを。そうしたら、あなたの後ろを追いかけてくるスーツ姿の人たちが」

「サツ?!」

 男の狼狽が焦りに変わっていく。

「たしかに、追われる理由はあるにはあるが、お前をストーカーしているからではねえ。そんな女々しいことをするような奴に見えるか?」

 男はなぜか敷島に問うた。敷島は彼の膨れ上がった二の腕を見て、首を横に振るしかなかった。

「ところでお前は伊奈帆のなんなんだ?」

 男の視線が完全に敷島を捕らえる。

「ぼ、ぼくは……」

「私のボディーガード。警察官Aよ」

「A?!」

「あそこの電柱の影にはBが。整体院のなかにC。ほかにもたくさん、ストーカーさんを捕まえるためにやって来た警察官がいるわ。もう逃げられない」

 屈強な男が一歩後ずさる。伊奈帆に背中を押された敷島が、よろめきながら前へ進む。と同時に、男が全速力で駆け出した。その大きな図体には似合わず、初動の速さはピカイチで、あっという間に姿が見えなくなる。

「一体全体なんだってんだろう?」

「分からないことだらけ?」

「どこからどこまでが本当のことで、嘘なんだ?」

「周りに警察官がいるってところは嘘。あの人がストーカーしてるっていうのは本当」

「ううん。警察官は本当にいるよ」

「え?」

 今度あっけにとられたのは、伊奈帆の方だった。

「僕が警察官だ」

 

 引きずる足をかばってもらいながら、敷島は家まで戻ってきた。車で家まで送ると提案したが、伊奈帆は「面倒ごとを増やしたくないから」という謎発言で断った。代わりに、「生命力を感じられる場所に行きたい」との指示を受け、敷島は車を転がした。

 小野川を超え、新利根川を越えた先に、新利根共同農学塾農場が現れる。広い草原に放たれた牛が、のびのびと。

草を食べる牛、寝そべる牛、尻の匂いをかぐ牛、様々な牛が大草原に放たれている。せせこましく人間であることに疑問を感ぜずにいられなかった。

 

 

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「わたし、もう少しだけ、ここにいたい」

 地面にしゃがみ込む伊奈帆に、敷島は声を掛けることができなかった。

 

 

 

 

『新利根共同農学塾農場』

所在地: 〒300-0612 茨城県稲敷市市崎2381

電話: 0299-79-2024

 

 

 

 

この物語を初めから見たいならこれを読むべし!

mohou-miyabe.hatenablog.com

 

 

2018年『いばキャラ祭り』にいなのすけが参戦!

 

 

 

 

負けられない戦いがある。

 

 

 

 

マスコットキャラクターもマスコットキャラクターなりに苦悩していて、「誰々よりも不人気だとマスコットキャラクター界から抹殺される」なんてうわさもちらほらと耳にする。

茨城県稲敷市のマスコットキャラクター・いなのすけは、そんな醜い世界とは無縁の場所で戦い続けてきたが、4月29日(日)に水戸で開かれた『いばキャラ祭り』においては、彼のずっと抑え続けてきた血を湧き上がらせるだけの戦いが巻き起こっていたので、もうどうすることもできなかった。

 

しかし、そこはマスコットキャラクター。殴り合いで戦いの勝者を決定するには、血なまぐさすぎるため、雌雄を決する種目は――

 

 

 

 

 

 

椅子取りゲーム

 

 

 

 

ここで、椅子取りゲームがわからない坊やたちのために、懇切丁寧な説明をウィキペディアさんがしてくれるよ。

 

 

  • 椅子取りゲーム

椅子を外側に向け円状に配置し、その周りに参加者が立つ。

椅子の数は参加者の総数よりも少なくする。
音楽と共に参加者は椅子の周りを回る。
音楽が止められると即座に椅子に座る。この時に椅子に座れなかった参加者はそこで負けとなる。
椅子の数を減らしていき、最後まで椅子に座っていた人の勝ち。

 

 

 

一見楽しいだけのゲームに思うことだろう。否、今大会において「楽しい」は初めから除外されている。音に合わせ楽しく踊り出すゆるキャラを、手を叩きながら楽しそうに見守る子どもたちは、何も知らなかったのだ。ゴングがずっとなり続けていることに。

 

 

いなのすけは第三グループに割り当てられた。ほかにも、とちまるくん、ポンデライオン、みとちゃん、いもぞー、もりすけ千姫ちゃま、ひぬ丸くんと強豪ゆるキャラがしのぎを削り、すくない椅子をかけて勝負する。それ以下でもそれ以上でもない、正真正銘、まっとうな勝負だ。

 

有力候補の筆頭は、ポンデライオンと、いもぞーだ。彼らはさも椅子取りゲームをするために生まれてきたかの如く、下半身の稼働力があり、尻が人間然としているため、他のどでかいお尻のマスコットキャラクターよりも座りやすい設計をしていた。しかし逆に言うと、どでかい尻をしているマスコットキャラクターのほうが、面積が広いため、簡単に椅子に座れるかもしれない。どう転ぶのか、始まってみないと勝負の行方は分からなかった。

 

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初戦、四つ置かれた椅子の周りに、七人のマスコットキャラクターが並ぶ。その姿は圧巻だった。互いが互いに睨みを利かせ、相対するマスコットキャラクターはもはやマスコットではなく、一人の武士。男の中の男だった。

 

ゆるゆると動きながら、距離感を図るマスコットキャラクターたち。外目には激しい野心に満ち溢れているとはだれも思わないだろう。

 

いざ、戦いの火ぶたが落とされた。

 

音楽に合わせながら、ふりふりと尻を振るいなのすけは、謙虚ながらも、いもぞーの後ろを追いかける。いなのすけの後ろを追うのは、人一倍頭のでかいとちまるくん。その異様な存在感がいなのすけの意識にどのような作用を及ぼすのかは計り知れないが、今のところいなのすけに変化は見られない。楽しそうに歩くばかりだ。

 

 

 

音楽はなり続ける。そのとき――。音楽が止まった。

 

 

その刹那、いなのすけは思い出した。

椅子取りに支配されていた恐怖を。

いばラッキーに囚われていた屈辱を。

 

 

いなのすけは今大会に、非常に強い思いで臨んでいた。

昨年のいばキャラ祭りで、いなのすけは涙をのんだ。仁義なき椅子取りゲーム。諸行無常の響きあり。泣くまで待とうホトトギス。頂点に立つものは、全てのマスコットキャラクターから崇拝され、一神教の神の座を与えられる(うそだよ)という、今大会で、いなのすけは、国体マスコットキャラクター・いばらっきーに敗退を喫した。

 

椅子に座ったのはいなのすけだった。だから彼は完全に勝ったと、心の中でほくそ笑んでいた。デスノートの夜神ライト的な笑みだった。しかし、実際に勝利していたのは、いばらっきーのほうだった。彼はいやらしくもいなのすけの尻に手を指し伸ばし、Lよろしく、完全勝利したといなのすけに勘違いさせ、泳がせ、自身の勝利をもぎ取ったのだ。

 

それからというもの、いなのすけは寝つきが悪くなり、普段は十時間眠れるところ、八時間くらいしか眠れない体になってしまった。いばらっきーのことを考えるだけで、負けた悔しみが蘇り、全身に冷や汗をかきながら悶える日々が続いた。

時間を作って椅子取りゲームの練習に励むいなのすけ。スクワットは何百回やったかもわからない。打倒いばらっきーを近い、血を飲む努力をし続けてきた。すべては、2018年のいばキャラ祭りのために――。

 

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音楽がやみ、ゆるきゃらが一斉に動きを止める。中央に置かれた椅子に群がり、おしくらまんじゅうを始めた。乗車率200パーセントの満員電車に匹敵する密集で、たちまちにゆるきゃらの団子が出来上がった。

いなのすけはというと、写真の通り、姿を確認することもできない。もみくちゃにされながらも、必死に抵抗しているのだろう。いばらっきーの不敵な笑みを思い出して。

 

徐々にキャラクター達がはけていく。明らかになっていく勝者と敗者。いなのすけはというと……。

 

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察してほしい。彼も彼なりに頑張ったのだ。スクワットのせいで筋肉痛になっても。ベストコンディションでは決してなかった。それなのに弱音もはかず、雨にも負けず、打倒いばらっきーを心に誓って一所懸命頑張ったのだ。

 

負けるな、いなのすけ。いくんだ、いなのすけ。いのちをだいじに、いなのすけ。

寂しそうに俯くいなのすけに、僕たちができることは、一体何なんだろう……。

 

 

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追記

久々にふざけた文章なので

書いていてすごく楽しかったのです

田舎と都会の違い――街灯問題――

つい先日、自宅から和田公園まで自転車を走らせた。片道十五キロ。いい運動になると、軽い気持ちでペダルを漕いだが、何やら様子がおかしい。

 

とてつもなく暗いのだ。それこそ幽霊でもでてきそうな。

千葉の市川にいた時じゃ考えられないほどの暗闇だった。街灯もほとんど置かれておらず、自転車のライトがなければ到底一人では進めないほどの闇。

 

人の思い込みとは面白いもので、今まで幽霊なんか見えたこともないのに、草木がざわめくだけで「うひゃひゃい」と叫んでしまう。

 

車の走行ライトならまだましに思える道でも、自転車のライトでは走行不可能になるほど。幽霊のでてきそうな道に、何度屈しそうになって来た道を帰ろうと踵を返したことか。これがライトも何も持ち合わせていない普通の歩行者だったなら……。ぼくなら日が暮れて暗くなった時間に外に出ようとは考えないだろう。

 

街灯の少なさは和田公園も同様だった。昼間はあんなに景色がよくて居心地の良い場所でも、一度暗闇に包まれると、幽霊の巣窟になってしまう。そして、和田公園では暗闇以外にも恐ろしい事象が発生した。何者かの声が聞こえてきたのだ。はじめその声をきいたぼくは、驚くよりも「どうして声が?」という疑問でいっぱいだった。

辺りを見渡してみても誰もおらず、あるのは暗闇ばかりだった。もう一度耳を澄まして、声をきく。

 

「もおー」。

 

完全に人の声ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ウシガエルだった。

 

ウシガエルが鳴き続けていた。

 

 

 

 

 

 

合唱できるほどたくさんのウシガエルが草木に身を潜めていた。それはそれで怖くて、でも幽霊でないことに安堵して、和田公園近くのサイクリングロードを再び走る。先にいったところに、車が一台とまっていた。車種には詳しくないので、何の車かはわからなかったが、怪しい趣がプンプン丸だった。ちょうどゴールデンウィーク始まりだったので、深夜釣りにでもきているのかと周囲を見渡してみても、人っ子一人いない(いたら怖くて逃げだすけれど)。怪しい。怪しすぎる。

和田公園の中にも車が一台置かれていた。ガラスはスモークで中が見えない。怪しい。怪しすぎる。

自宅を出発して、和田公園に着いたのは11時近く。そんな時間に公園へやってきていったい何をするというのだろうか。あやとりだろうか、それともポケモンGOだろうか。

分からないが、何の罪がなくても、暗闇のせいで犯罪者扱いされてしまうのもかわいそうな話だった。

プレイスメイキングで和田公園を「人を呼び込むため」の公園にするなら、この街灯問題にも着手する必要があるのかもしれない。さすがに深夜帯に自転車を転がす愚か者(自虐)はいないにしろ、夜の七時近くですっかり日が落ちる冬場なんかは、街灯が無くては人も寄り付かないだろう。怖いし、怖いし、怖いからだ。

 

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ここで一句

 

田舎はね

たくさんいるよ

ウシガエル

 

ともぞう心の俳句