幼稚園生相手に大の大人があたふたした話
稲敷市江戸崎『笑遊館』にて開催されるこいのぼり祭りに、三期生の地域おこし協力隊が紙芝居を見せにいきます。
お相手は幼稚園・保育園の年代なので、果たしてどうなることやら。静かにもくもくと紙芝居を見ている感じなのか、騒ぎに騒ぎ、いきり立っているのか、「このくそやろう。ひっこめこんにゃろう!」と、ヤジを飛ばされるのか、行ってみないことにはわからない。
そんなことより、若干緊張しているのは何故だ。手から汗がとまらんぜ。失敗を何より、も恐れてるぜ。逃げ出したいくらいには。大の大人が幼稚園生相手に震えあがっているぜ。でも地域おこし協力隊として活動するからには、初任務はきちんとやり遂げなくては。
ちなみに、前回の文章から推敲したのがこちら。
はなみずズーズー。はっくしょん。咳はゴホゴホゴホのまなぶくん。
いつもはおうちのベットで眠っていますが、今日は待ちに待ったお出かけの日。
らんらんらん! お母さんといっしょにすっきぷしながら公園へむかいます。
公園には川が流れています。きらきらきらきら、輝いていました。
「わーいわーい!」
ぴょん! 川で何かが飛び跳ねました。
「うわあ、なんだろう?」
ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん!
「こいだ!」
まなぶくんは大喜び。でも、こいの様子が変です。ねずみ色の小さな棒が刺さっているのが見えました。
「釘だ!」
ぴょんぴょんぴょんぴょん!
こいは何度も飛び跳ねます。
「ちょっと待ってて。今行くから!」
水の中へドボン。はなみずズーズー。はっくしょん。咳がゴホゴホ。それでもまなぶくんは、がんばってこいの元へと向かいました。少し怖かったけれど、こいの体に触れて、釘を抜くまなぶくん。
すると、どうでしょう。こいはすっかり元気になって、川を泳いでいくではありませんか。
「いっぱい生きてね」
泳いでいくこいを、まなぶくんは手を振りながら見送りました。
すいすい、泳ぐよ、こいくんは。
まなぶくんに釘を引っこ抜いてもらって、すっかり元気なこいくん。
「あのやさしい男の子にまた会いたいなあ」
「あの子なら、もうずっと、家から出ていやしないよ」
一匹のカラスがこいくんに向かっていいました。
「それならどこの家か知ってるのかい?」
「そりゃあもちろん」
カラスの教えてくれたおうちまでスイスイスイ。男の子はベットで眠っていました。
「もう治らないって」
カラスが悲しげに言いました。
「治らないって、何が」
「あの子の病気さ」
「そんな……」
「一つだけいい考えがあるんだけど、聞くかい?」
もったいぶって言うカラスを、こいくんは急かしました。
「そんなに焦るなって。病気が治る花があるんだ。どんな病気でもぱっと治っちまうような、ものすごい花さ」
「それを取ってくれば、あの男の子の病気は治るんだね?」
「もちろん」
スイスイスイスイ。急いで泳ぐよ、こいくんは。カラスの教えてくれた滝は、とっても大きい滝でした。あまりにも大きすぎて、こいくんは、
「うひゃあ!」
と驚いてしまいました。花はこの上にあると、カラスは言っていました。
こいくんは、「いくぞ!」と声を出して、おっきくジャンプ!
やった! 大成功! でもすぐに、落っこちてしまいます。
もう一度、ジャンプ! じゃんぷ! 大ジャンプ!
何度やっても上手くいきません。こいくんはいやになって、
「ぼくにできるのかなあ」
と泣きたくなってしまいました。
でも、こいくんはがんばります。まなぶくんの笑顔を取り戻すためです。そう簡単には諦めきれません。
もう一度、思いっきりジャンプ! ジャンプしては落ちて、ジャンプしては落ちて。
こいくんが滝の半分まで登るころには、日もすっかり落ちた夕方になっていました。
「やったやったやった!」
頂上までたどり着いたこいくん。花はすぐ近くです。口で花をもぎ取ると、こいくんは真っ逆さまに滝を落ちていきました。
まなぶくんはずっと、家の窓から外をみていました。「たいくつだなあ」と、独り言を呟いたそのとき。
ぽちゃん。
外で水が跳ねる音がしました。外へ見に行くと、何かが落ちていました。一本の小さな花です。手に取ってみると、まだ湿っていました。
「まなぶくん!」
「だれ?」
「ぼくだよ、こいだよ。あの時は助けてくれてありがとう! 花を取って来たんだ。ちょっと苦いけど、病気が治るんだよ。外にだって、いっぱいでられるんだ」
「本当に?」
「本当さ。だから早く!」
まなぶくんは嬉しくなって踊り出しました。右足を出し、左足を出し、わんつー、わんつー。こいくんもまなぶくんの動きに合わせてひれを動かします。まなぶくんとこいくんはずっと、踊り続けるのでした。
それから、まなぶくんの病気はすっかり良くなって元気いっぱい。いつでも遊べるようにと、こいの形をしたこいのぼりを作って、おうちの庭に飾ることにしました。
すいすいすいすい。そよ風に揺られてきもちよさそうに泳ぐこいのぼり。おっきな空にとけこんで楽しく笑っているようでした。
そんなこんなで、行ってまいります。
庁舎帰宅後……。
どっと疲れた。顔中あせだらだら。
だらだーらだーらら。
でも、みんないい子で本当によかった。お腹痛くなった。これはおそらく緊張のためではなく、男の子に殴られたせいだ(全然痛くはなかったよ笑)。
反省点は登場人物によって声色に強弱がつけられなかったこと。まなぶくん、こい、カラス、セリフ以外の地の文を読むナレーションを、全く同じトーンで読んでしまったため、幼稚園の子たちにわかりづらかったのではないかと。
明日もまた二組、同じ内容の紙芝居を読む予定なので、今度こそわかりやすく読めるようリベンジや!
江戸崎『笑遊館』
営業時間:10時00分~17時00分
電話: 029-892-2117
追記
推敲文載せてかさまししているとか言わない。
写真はあとで載せます。