田舎と都会の違い――街灯問題――
つい先日、自宅から和田公園まで自転車を走らせた。片道十五キロ。いい運動になると、軽い気持ちでペダルを漕いだが、何やら様子がおかしい。
とてつもなく暗いのだ。それこそ幽霊でもでてきそうな。
千葉の市川にいた時じゃ考えられないほどの暗闇だった。街灯もほとんど置かれておらず、自転車のライトがなければ到底一人では進めないほどの闇。
人の思い込みとは面白いもので、今まで幽霊なんか見えたこともないのに、草木がざわめくだけで「うひゃひゃい」と叫んでしまう。
車の走行ライトならまだましに思える道でも、自転車のライトでは走行不可能になるほど。幽霊のでてきそうな道に、何度屈しそうになって来た道を帰ろうと踵を返したことか。これがライトも何も持ち合わせていない普通の歩行者だったなら……。ぼくなら日が暮れて暗くなった時間に外に出ようとは考えないだろう。
街灯の少なさは和田公園も同様だった。昼間はあんなに景色がよくて居心地の良い場所でも、一度暗闇に包まれると、幽霊の巣窟になってしまう。そして、和田公園では暗闇以外にも恐ろしい事象が発生した。何者かの声が聞こえてきたのだ。はじめその声をきいたぼくは、驚くよりも「どうして声が?」という疑問でいっぱいだった。
辺りを見渡してみても誰もおらず、あるのは暗闇ばかりだった。もう一度耳を澄まして、声をきく。
「もおー」。
完全に人の声ではなかった。
ウシガエルだった。
ウシガエルが鳴き続けていた。
合唱できるほどたくさんのウシガエルが草木に身を潜めていた。それはそれで怖くて、でも幽霊でないことに安堵して、和田公園近くのサイクリングロードを再び走る。先にいったところに、車が一台とまっていた。車種には詳しくないので、何の車かはわからなかったが、怪しい趣がプンプン丸だった。ちょうどゴールデンウィーク始まりだったので、深夜釣りにでもきているのかと周囲を見渡してみても、人っ子一人いない(いたら怖くて逃げだすけれど)。怪しい。怪しすぎる。
和田公園の中にも車が一台置かれていた。ガラスはスモークで中が見えない。怪しい。怪しすぎる。
自宅を出発して、和田公園に着いたのは11時近く。そんな時間に公園へやってきていったい何をするというのだろうか。あやとりだろうか、それともポケモンGOだろうか。
分からないが、何の罪がなくても、暗闇のせいで犯罪者扱いされてしまうのもかわいそうな話だった。
プレイスメイキングで和田公園を「人を呼び込むため」の公園にするなら、この街灯問題にも着手する必要があるのかもしれない。さすがに深夜帯に自転車を転がす愚か者(自虐)はいないにしろ、夜の七時近くですっかり日が落ちる冬場なんかは、街灯が無くては人も寄り付かないだろう。怖いし、怖いし、怖いからだ。
ここで一句
田舎はね
たくさんいるよ
ともぞう心の俳句