inasikinohanasi日和

茨城県稲敷市地域おこし協力隊が稲敷について語ります。

地域おこし初任者研修に行って考えさせられたこと

千葉市幕張新都心線の隣接地からバスに揺られ、十分程度。やってきたのは……。

 

f:id:mohou-miyabe:20180522102640j:plain

 市町村アカデミー

 

 

16日から18日の三日間、この要塞に閉じ込められ、痛めつけられ、ひどい仕打ちを受けるのだろう。

ガクブルしながら入館。さすがに鞭をもった鬼教官はいなかったが、ここで心を許したらいつ取って食われるか分かったものではない。気を抜くことなく、午後から始まる講義に臨んだ。

 

初日の講義は三つ。全てを紹介するのは忍びないので、特に印象に残った箇所を抜粋して紹介したいと思う。

『地域づくりをサポートする外部人材に求められる役割』と題して、徳島大学総合科学部の田口太郎先生が行った講義では、「地域おこしとは何たるか」という一番あやふやな部分を定義づける説明がなされた。

日本全体をみても人口が減ってきているのに、地域の人口流出を防ぐのは困難だとして、地域おこし協力隊の存在意義を1.地域に「やる気」と「自信」を創出させる。2.外の目線で再評価し、価値化する。3.行政だけではなり得なかったネットワークの接続により、様々な連携が生まれさせる。

とし、「地域おこし協力隊」=「人口増加集団」ではないことを説明した。

 

同じ場所で同じことを繰り返していくと、そのこと自体がいつの間にか当たり前になってしまって、「誰でもできることをやっているんだ」と自信を失っていくことが往々にしてある。例えば、長野の自治体で働く地域おこし協力隊は、ある日、尋ねていった民家で、一人のおばあちゃんが慣れた手つきで竹籠を作っているのを見て度肝を抜かれたという。その技術力があれば、ビジネスにつなげられると考えた地域おこし協力隊は、そのかごをネットショップに出品した。おばあちゃんからしてみれば、「いつもと変わらない日常」なのに、地域おこし協力隊という『新しい目』が介入することで、ただの日常が価値化する。事実、そのかごは売れに売れ、今度度肝を抜かれたのはおばあちゃんのほうだった。

地域おこし協力隊に出会うまえのおばあちゃんは、自分の作ったかごが売れるわけがないと思い込んでいた。しかし、地域おこしに出会い、ネットショップに出品し、自分の作ったかごにお金を払う人が増えていくと、「自信」がつき、「やる気」に転換されていった。人口流出を防ぐ術がなかったとしても、こうした活動を通して、人の意識を変えることは可能だということ――もしかしたらそれが地域おこしの本質なのかもしれない――を、今回の講義で学ぶことができた。

 

二日目は、地域おこしにまつわる様々な問いに対して、グループで意見を出しあうワークショップを行った。

 

『行政から「何をしてもいい」と言われた。地域おこし協力隊として何をする?』

という問いに対し、自分たちの班では、

 

・まず地域を学ぶ

・地域のキーパーソンを見つけて、お話を伺いに行く

・地域を回って、住民の方と話す

・自分が何者であるか地域の人に知ってもらう

消防団など地域の住民の方とつながりを持てる場に参加

・地域おこしの先輩がいればその先輩に付き添う

・あいさつ回りなど、能動的に動く

・周りに相談

SNSなど情報発信

・奴隷にならない程度に仕事を請け負う

・自分のやりたいことを地域に向けて発信する

 

といった意見が出た。

 

また、『自分のミッションについての行政の説明と、地域の人の考えが食い違っていた。そのとき、どうする?』という問いについては、

 

・第三者の意見を取り込む(テレビ、新聞を呼んで)

・行政と地域との会合を開く

・場合によっては目標を変える

 

 

『ところで、地域おこしって何?』という問いに対しては、

 

・人と人を繋ぐ

・地域の外の人とのネットワークづくり

・地域の価値をビジネスにつなげる

・地域を有名にすること

・ファンを作ること(ストーリを作る)

イノベーションすること

・宣伝する必要なく広める

・魅力を自覚し、売り込むこと

・地域おこし協力隊が必要なくなるくらい、住民が地域おこしに積極的になる

 

といった意見が出た。特に「地域おこし協力隊が必要なくなるくらい、住民が地域おこしに積極的になる」というのは、さきほど紹介した長野の事例にもつながってくるように思う。「かごが売れる」と、自分の作ったものに価値を見出したおばあちゃんは、あとはその売り方さえ教えてしまえば、勝手に事業を展開していくことだろう。地域おこしの仕事は、一回こっきりのワークショップを開くことではなく、その後を見越した活動が大部分を占めてくる(今回の研修で一番学んだことは多分これ)。

 

今までの僕は「人を呼び込むならイベント開けばいいでしょ」みたいな安易な発想に帰結していた。たしかにそれで一瞬は地域が活性化したように思うし、活動したことで満足感は得られるし、人を呼び込むための材料としては申し分ないのだろうけど、「それで仕事おーわり!」は許されない。三年間の任期を終えてからも、地域はそのあとも続いていくし、住民は変わらずそこにいる。

 

とりあえず今自分にできることは

 

定住に向けた事業を見つけ、

地域おこしとしても活用

すること(なんだかフワッとしている)

 

……と、いろいろと考えさせられた研修でしたとさ。