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茨城県稲敷市地域おこし協力隊が稲敷について語ります。

妙岐ノ鼻について(植物、鳥類、野焼き)

妙岐ノ鼻名称の由来

この場所が霞ケ浦に向けて鼻のように突き出していることから。妙岐ノ鼻一帯は、今では見かけることの少なくなった、かやぶき屋根の材料となる葦が生い茂る「茅場」。その広さは50ha、東京ドーム約10個分もの広大な湿原で、関東では最大級のヨシ原といわれている。

 

妙岐ノ鼻

1.地勢

妙岐ノ鼻は霞ケ浦の南岸、新利根川河口左岸に位置する面積52haの低湿地で、茨城県稲敷市の浮島地区東端にある。

 

2.管理

現在、妙岐ノ鼻の管理者は水資源機構。野鳥観察ステージのほか、野鳥観察小屋、遊歩道、水辺デッキ、木道といった自然を観察する施設は水資源機構によって整備されたもの。

 

3.植物

ヨシ

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カモノハシ

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カサスゲ

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などを主体とする湿地植物群落が分布。

北側の湖岸沿いは、乾燥地に見られるオギ群落やヨシ―セイタカアワダチソウ群落等が分布。「萱」と呼ばれるカモノハシはイネ科のカモノハシ属の多年草で、高さは30~70センチ程度。秋田県や栃木県には生息が確認されているが、地域的に絶滅が危惧されている。霞ケ浦周辺でカモノハシが確認されたのは妙岐ノ鼻のみ。

 

 

4.鳥類

オオセッカや

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コジュリン

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オオヨシキリ

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コヨシキリ

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が繁殖している。

 

 

妙岐ノ鼻の歴史

現在の妙岐ノ鼻の面積は約52haとされているが、かつてはより広い面積を有していた。昭和初期から中期にかけて行われた干拓や堤防の建設によって、萱場の面積が徐々に減少していった。

 

妙岐ノ鼻の所有権の変遷

現在の所有権は前述のとおり水資源機構に置かれているが、かつては浮島村の所有地だった。(断定はできないが、明治以降)

1953年の町村合併促進法の公布から1955年には浮島村と古渡村の合併で、妙岐ノ鼻は浮島財産区の財産となった。1987年に水資源開発公団によって買収(途中、ゴルフ場用地として買収したいとの声もかかったが)、現在に至る。地区外者に支払われた金額は不明であるが、浮島財産区の財産であった土地は10億6000万円で処分された。

10億6000万円のうち6割が浮島財産区、4割が桜川村に充てられた。浮島財産区に入った約6億円から、入会権(いりあいけん)の放棄料として、当時萱場の入会権を持っていた202戸に対して、それぞれ100万円が支払われた。

 

妙岐ノ鼻が水資源開発公団に買収される1987年まで、妙岐ノ鼻は入会地(入会地とは、村や部落などの村落共同体で総有した土地で、薪炭・用材・肥料用の落葉を採取した山林である入会山と、まぐさや屋根を葺くカヤなどを採取した原野・川原である草刈場の2種類に大別される)的に利用されていた。当時、入会権を持っていたのは浮島地区の225戸。権利を持たない家の人たちは、本家などの親しい家から権利を借りて萱を刈り取り、それを屋根に利用していた。

 

1987年の水資源機構による買収の際、契約により入会権は消滅し、以後、浮島地区に住んでいさえすれば誰でも萱狩りをおこなえるようになった。しかし、そのころには茅葺屋根が徐々にトタン屋根や瓦屋根に代わってきており、自分の家のために萱を刈る人はほとんどいなくなっていた。

 

 

ヤーラモシ(野焼き)中止の理由

2005年のヤーラモシ終了後、つくば市の団体から「野焼きは環境汚染である」とクレームを受け、ヤーラモシ実施主体である浮島財産区は実施の是非について検討を行った結果、今後は主体者として実施しないことを決定した。

 

 

ヤーラモシについてそれぞれの思い

水資源機構職員

 水資源機構としては、昔から刈り取りして火入れして環境を維持してきたので、途端に野焼きをしなくったら環境が変わってしまうのではないかと危惧している。できれば野焼きを続けたい。

 

稲敷市職員

 市は妙岐ノ鼻を売却したのだから、権利はこちらにはなく、クレームの責任も取る気はない。また、水資源機構水資源機構で、刈らせてやっているのだから管理は市の仕事だろうと、お互いにクレームを押し付けあっている。また、クレームに対する科学的な根拠(野焼きをすることでどういった環境保全が行われるのかといった)がなければ、クレームに対抗できないので、これから先も野焼きを続けていくことは難しい。

現在妙岐ノ鼻の萱を刈っているのは五人(2007年時点)で、それも生活のために使っているのではなくお金儲けのために萱を刈っているため、行政としては力を入れづらい。

 

浮島財産区管理会

 水資源機構がヤーラモシの主体になるのであればいくらでも協力するが、責任の所在が不明確な現状では野焼きに賛成できない。環境保全のためのヤーラモシを行っても、浮島財産区管理会には何のメリットもない。

 

茅葺職人、萱師

 野焼きをすればいい萱が出てくる。悪い萱だと売る時に申し訳ないから、できることなら野焼きを継続してやっていってほしい。また、妙岐ノ鼻にはいろいろな種類の鳥がいるけれど、野焼きしてもまた戻ってくるから鳥類には影響が少ないのではないか。

心情としては野焼きしてほしいが、妙岐ノ鼻を借りて萱を刈っている身分なので、萱刈りを禁止されるのが怖くて、市にも強く主張できない状態である。

 

 

野焼きの復活

2019年3月、妙岐ノ鼻のヨシ焼きが十五年ぶりに復活。

2005年、野焼きに対して環境汚染を懸念するつくば市からクレームが入り、水資源機構および浮島財産区管理会、市役所に責任の所在が問われ、それ以降野焼きは実施されなかった。また近隣住民からクレーム、2011年の東日本大震災などいくつかの要因が重なり、2005年以降は小規模な実験を除いて野焼きを中断していた。

今回の野焼きによって、病害虫駆除、植物の成長などが期待される。特に良質な萱の生成に役立っており、刈り取られた萱は水戸市にある偕楽園好文亭の茅葺屋根に使われるという。

ヨシ焼きは3月3日午前九時から始まり、正午まで行われた。52ヘクタールのうち、約2.7

ヘクタールの湿原が燃やされる。火が全体にわたらないように、事前に約20メートル幅のヨシを切り取って防火帯を設けている。

当日、風向き・風速等問題なく実施され、周囲住民の影響や苦情等もなく大成功に終わった。

 

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(写真:2019年3月3日、妙岐の鼻野焼きの様子)

 

参考 2007年度修士論文

   ひとと自然のかかわりからみた霞ケ浦・妙技ノ鼻の生態系保全

 

参考 ヨシ焼きの再開に向けた取り組みについて 小野 正人