稲敷の観光材料、オオヒシクイについて
以前まで干拓について調べていたので、今回は稲波干拓にやってくるオオヒシクイについてメモ程度に記していこうと思います。
オオヒシクイの特徴
オオヒシクイはガチョウ大の鳥で、両羽をひろげると160センチ程度、全長は83センチくらい。体全体は褐色で、くちばしと足がオレンジ。ヒシクイはくちばしが短く先が鋭い、また首は短い特徴を持つ。オオヒシクイはくちばしが長く、丸みを帯び、また首は長い。
飛びながらグアングアンと鳴く。
飛ぶときの合図
飛び立つ前に数羽が首を横に振って周りのヒシクイも同じようなしぐさをし始めた後に、一斉に群れが飛び立ったという観察記録がある。
(写真上ではほとんど見分けがつかない)
ヒシクイの性格
ヒシクイは沼太郎という異名を持つ。白鳥のように見た目がきれいなわけではなく、泥だけになってエサを食べるその様はまさに異名通り。性格も引っ込み思案で、体全体を見せることはめったにない。茂みに隠れていたり、稲に隠れていたり、マガンや白鳥に比べてヒシクイは突出してシャイである。
とにかく臆病で警戒心が強い。マガンよりも湿っぽいところに住んでいて、人が容易に近づけないような場所に潜んでいる。
エサの種類
冬期は主に植物食で、水生植物の葉、茎、根、あるいは他の落ちモミを食す。最も顕著にみられたのは、稲の茎の根元の食痕であり、またイネの籾の食痕も見られた。稲以外の食物では、特にスズメノカタビラ、スズメノテッポウの食痕が多くみられた。
ヒシクイの越冬ルート
オオヒシクイは主に群れで動き、秋の終わりころ北海道に飛来し、冬期には本州北部に移動する。
カムチャッカ半島の繁殖地で標識を付けたヒシクイが日本で発見され、カムチャッカ半島のヒシクイが日本へ渡来していることがわかった。また、日本への渡来ルートはシベリアのアナドゥリ低地からオハ、アニワ湾、北海道宮島沼へと移動するサハリンコースと、カムチャッカ半島から北海道生花苗沼などを経由してくる千島列島コースの二つと推定されている。
日本での代表的な越冬地
新潟の福島潟・朝日池、宮城県の伊豆沼、石川県の片野の鴨池、滋賀県琵琶湖、のほか関東圏唯一の霞ケ浦など。
渡り鳥の利点
渡り鳥は長距離を移動しなければならないから、群れからはぐれたり、外敵から狙われたりする危険性が増え、渡りをしない鳥のほうが得なように見える。
しかし決してそうとは言えず、渡りをする鳥にはやはりそれなりの利点があるから、そうした習性が発達してきたし、一年中とどまっている鳥にもそれなりの利点がある。
渡りをする鳥(今回の場合、雁を例にとる)の利点を考えてみると、繁殖地は極北部で、彼らは冬が訪れる前の9月ごろから南に向けて飛び立つ。そのころ、まだ極北部にはエサは残っているし、雪が降ったり、吹雪に見舞われているわけではない。
しかし、もし彼らが10月11月までその場にとどまっていたとしたら、エサになる木の実や虫もなくなり、やがては降雪に見舞われて確実に飢えと寒さで死んでしまうことだろう。
それならば初めから南にいればいいように思われるが、実際はそうでもない。北の地域は夏になると日照時間が長く、単一の環境が続くから、エサが豊富になって、雛を育てるのに絶好の環境に代わるからだ。ガンは繁殖期になると北に移動する。
生活場所としては稲波干拓地、霞ケ浦、小野川の三か所が主で、観察時期のみで見てみると、稲波干拓地89.6%、霞ケ浦5.5%、小野川4.5%となり、稲波干拓地の比重が大きい。
ヒシクイの群れは各生活場所を使い分けているようで、稲波干拓地は採食、休息、羽づくろいなどの基本的な生活要求を満たす場として機能し、一方霞ケ浦は主に攪乱を受けた場合の避難場所として機能、小野川は主に渡来初期と渡去前にねぐらとして利用されていた。
生活場所間の移動
生活場所の移動は、午前6時から深夜の23時ごろまでで、移動のピークは早朝と夕方に見られた。早朝の移動はすべてねぐらから稲波干拓への移動であり、主に6時から7時ごろにかけて観察された。季節での変化も見られ、主に日の出前後の約一時間に観察された。
また、夕方の移動のほとんどは稲波干拓地からねぐらへの移動であり、ねぐらへの移動は16時30分から18時ごろにかけて観察された。こちらも季節によって変化があり、主に日没後30分以内に見られた。
【K488カ】
編集/柿澤 亮三 ㈱地域環境計画【K488カ】
新潟県の福島潟では9月ごろ5000羽以上のオオヒシクイが越冬し、西蒲区の岩室温泉は「霊雁の湯」とも呼ばれているくらいオオヒシクイが有名な土地。新潟の魅力を発信するサイト『ガタプラ』ではオオヒシクイに関する情報を載せ、オオヒシクイを観光材料として捉えている。
新潟魅力発信サイト『ガタプラ』
https://iju.niigata.jp/gatapra/about
また、実際に稲波干拓のオオヒシクイを観察している「雁の郷友の会」の観察員の方にお話を聞いてみると、東京や千葉、神奈川、埼玉など都市圏のほか海外からもオオヒシクイを観察しに来る団体が訪れるそうで、オオヒシクイの人気の高さがうかがえる。