稲敷の浮島でチューリップ祭り開催されるってよ
先を急ぐことほど、割に合わないことはない。
昔話のウサギと亀だって、マイペースに歩を進めていった亀のほうが、最終的には一位でゴールインするのだし、早く見たいからといって、おじいさんがふすまを開けなければ、恩返しにやって来た鶴はもっとはたを織ってくれたことだろう。
急ぎすぎると本当に、ろくなことがない。
稲敷の和田公園のチューリップは、大半が先を急いでいた。
我先にと、花を咲かせ、色鮮やかなのはいいけれど、ちょっと待て君たち、君たちの本番、チューリップ祭りは4月15日のはずだぞ。このタイミングで咲き誇ってどうする?
もう少し待てばいろんな人から写真を撮られて「綺麗だわねえ」とか「鮮やかねえ」とかたくさんほめてもらえただろうし、演歌歌手の歌声だって聞けただろうに、どうして君たちはこんなに早く咲いてしまったのだ。
――私たち、不器用ですから。
チューリップのぼやきが聞こえてきそうだ。そんな中、同胞を裏切って、咲くのをためらったチューリップもちらほらと見かけたが、奴らはなかなかのやり手で、おそらくチューリップ祭りのために力を温存しているのだろう。ずるがしこいが、この手のタイプが一番先にビジネスを成功させるのだ。
- 飛ばしてもいいくらいどうでもいい寸劇(チューリップの会話)
赤「ねえ見て、お隣さんの黄色チューリップさん、もう咲いちゃってるわよ」
白「あらやだ、本当ねえ」
赤「私たちはもっとのんびり行きましょ。急いでもしょうがないですもの」
白「ええええ、そうですわね。でもちょっと暇ですわ」
赤「私、この暇な時間にいろいろなことを考えたの」
白「え?」
赤「ビットコインに手を出そうと思って」
白「ええ?」
赤「大丈夫、心配しないで。流出してもまだ大丈夫」
白「えええ?」
赤「ツイッターも仮想通貨関連の広告を禁止するとか言っていたじゃない? でも大丈夫なのよ」
白「ええええ?」
赤「7000ドル台まで持ち直したの。だから、白チューリップさんもどうかと思って」
白「えええええ? 私?」
赤「ええ、でも全然怪しいものじゃないですから。本当に。一緒に始めてみません?」
白「どどどd、どうしようかしら。息子にもちょっと相談しないと」
赤「息子さんならもう始めたって言ってたわよ。だから大丈夫よ」
白「始めてるの、息子? ほんとに?」
赤「ほんとよ、ほんと。私が今まで嘘ついたことがあって?」
白「いいえ、ないわ……」
赤「ね。だから信じて。信じて信じて、テリーを信じて! ね!」
白「分かったわ。信じるわ」
こうしたまた一人、もとい一本のチューリップが、仮想通貨に手を出すのだった。
- 話は戻って……
それにしても和田公園のチューリップはなかなか綺麗に咲きほこっている。この中のうちのどれかが仮想通貨のことで頭いっぱいだとは到底思えないほど、見事なまでの咲きっぷりだ。
時期的にはどうしても桜にばかりかまけてしまうが、チューリップもなかなか捨てがたい。ちなみにいうと、赤色のチューリップの花言葉は『永遠の愛』、ピンク色は『愛の芽生え』、黄色は『実らぬ恋』、紫色は『不滅の愛』と、それぞれ愛や情熱を表現するための要素が強いらしいのだ。今回稲敷の浮島で開催される『チューリップ祭り』を愛の告白の場に使うのも、また一興。「チューリップの花言葉、知ってる?」なんて常套文句を囁けば、お相手の女の子もきっとイチコロ。いざ、チューリップ祭りへ。
- チューリップ祭り
遅すぎるくらいのタイミングでチューリップ祭りの概要説明へと移ります。
なななんと、稲敷浮島で開催されるチューリップ祭りはなんとなんとなんと、今年で26回を迎える超ベテラン級のイベントなのです。師匠と呼んでください、一礼も忘れずに。
そして会場には30種類約20万本のチューリップが所狭しと、存在感を放って咲いています。……もしかすると、当日は若干元気がないチューリップの姿を見かけるかもしれませんが、その時は「ああ、行き急いだんだなあ」くらいに思っておいてください。
当イベントはチューリップだけでは終わりません。そうは問屋が卸しません。
太鼓あり、ご当地キャラ登場あり、踊りあり、演歌あり、出店ありと、なんでもござれの大フィーバー祭り(誇張が過ぎたかもしれん)となっており、家族総出で来ても楽しめる内容となっております。
参加費? ノンノン。野暮なことは聞いちゃいけねえよお。こちとら何年やってると思ってんだい? いらねえよお、そんなもんは。ただ財布は持って来いよ。うめえもんがたらふく食えるからなあ。
『チューリップ祭り』
日時:2018年4月15日(日)
TEL:029(892)2000
稲敷境島のあらいやオートコーナーを小説風に紹介してみた!
冬もすっかり鳴りを潜めた初春の頃。
のっぺりとした畑や田んぼに囲まれた国道沿いに、甲高いブレーキ音を発する一台の車が、タイヤ痕を残して急停止した。
美由紀の激高は、最高潮に達していた。
「もっと必要だって言ってるでしょ!」
敷島の制止を振り切って、美由紀はNBOXから飛び出した。これ以上ない腕力で扉を閉め、走り出す。行くあてのない旅には赤いハイヒールは不向きで、少し走った先でヒールの部分が取れ、美由紀は泣きながら、コンクリートの道――国道51号線を素足で駆けた。
敷島の計画性のなさは、ほとほと美由紀を呆れさせていた。
例えばこの前の旅行の時もそうだった。
箱根に行くと決めてから、「すべて俺に任せろ」といった彼を信用し、その言葉通り、全てを彼に任せたのが運の尽きだった。
まず彼は、旅行で一番初めに決めるであろう宿を、来てからでいいだろうという謎の楽観性を見せて、事前予約をしなかった。平日に旅行へ行ったとはいえ、人気スポットである箱根、案の定、どこの宿も空いておらず、五、六件回ったところでタイムアップ。午後八時、現地でレンタカーを借りて車中泊するというあり様。
さらに、美由紀が絶対に行きたいと言っていた「ぱんのみみ」も、その直前のスケジュールで入れ込んでいたガラスの森の美術館の滞在時間が押して、――そもそもぱんのみみの営業時間が午前11時から午後16時であるという情報さえも彼は把握していなかった――行くことは叶わなかった。美由紀は絶対に「ぱんグラタン」の写真を撮って、インスタグラムにあげようと考えていたのだ。箱根に行く一番の理由はそれだったのに。
ふと、美由紀は過去を思い出すのをやめ、突然立ち止まった。
美由紀の足はもう限界に近づいていた。いつも靴に守られているはずの足は、舗装されたコンクリートの上でさえも、ちゃんと機能してはくれなかった。通り過ぎていく運転手の視線は痛いし、足はもっと痛い。
泣いたせいで化粧は崩れ、もうお花見どころではなくなってしまったことを今更ながら自覚する。両手で持ち上げたハイヒールはただのヒールに、結婚間近の花嫁はただの女に、楽しいはずの花見も、涙ばかりが散る虚しい行事へとなり果ててしまった。
結婚。お金さえあれば。親さえ認めてくれれば。彼さえしっかりしてくれれば。場所さえ都合が付けば。誰かが後押ししてくれれば。なんとかなっただろうに。
セブンイレブン茨城東西代店から鹿嶋方面に走り続けること、約2キロ。美由紀の涙が枯れることはなかったが、次第にその原因は足の痛みだけではなくなっていった。
「あらいやオートコーナー」という文字を目にしたとき、美由紀はまず、自身の目をこすりにこすった。看板に書かれた文字がかすれて読みづらかったからだ。しかし何度目をこすっても滲んだ文字は滲んだ文字のまま。看板自体がかなり前に建てられたようで、雨やら何やらでだんだんと文字が薄くなってしまったのだろう。吸い寄せられるように看板奥に進むと、そこには取ってつけたような平屋があった。中には人が数人と、おそらく自動販売機と思われる大型の機械、そして故障中の札が張られたアーケードゲーム。その一角だけでもレトロが過ぎていた。
美由紀は恐る恐る平屋の中へと入り込んだ。椅子に座っているのは、つなぎを着た作業員風の男性一人のみ。男性が急ぎ足でかき込み食べているのは弁当のようだ。さっきまでいた老人は美由紀と入れ違いに外へ出て行ってしまった。
――もしかして、これ?
ぼろぼろの自動販売機に近づき、手書きの文字を読んでみる。
焼肉弁当300円。ひれかつ300円。鶏唐揚げ弁当300円。
まさか本当に弁当が出てくるなどと、美由紀は了見もしていない。しかし300円を一枚一枚確かめるようにゆっくりと入れ、焼肉弁当のボタンを押し、そのあとすぐ温かい弁当を手にしたときには、驚きを隠せなかった。今度は唐揚げ弁当のボタンを押す。続いてひれかつ。面白くなってまた300円を投入しようとしたところで、
「美由紀!」
腕を取られた。後ろを振り向くと、怖い顔をした敷島が、美由紀の目を真正面に見据えていた。
「足から血が出てるじゃないか! 早く、ぼくの背中に乗って」
かがみこむ敷島。その背中は広く、頼もしい。しかし美由紀は頑としてその場から動かなかった。弁当三つを掲げ、彼の前にかざす。
「ごめん。やっぱり花見にコンビニのサンドイッチだけじゃ足りないよね」
彼の優しい笑顔で、美由紀はまた目頭が熱くなる。
「ううん、私こそゴメン。私が家で作ってくれば、こんなつまらないことで言い争いなんかしなくて済んだのに」
そういって、美由紀は今さっき買った三つの弁当を敷島に差し出した。
「これで全部解決だね。花見、いこっか」
「その前に病院、ね」
敷島の背中のぬくもりと、弁当から発せられる温かみが全く同一で、美由紀はそれだけで幸せだった。
『あらいやオートコーナー』
営業時間:7時~18時
電話番号:0299-78-2526
美由紀と敷島の行く末が知りたいなら、これを読むべし!
↓
追記
稲敷の紹介を小説風にやってみたのコーナー。
書き終わって思った。
味の感想書いてない……。
それよりも何よりも言いたかったことはただ一つ。
レトロな機械に
食品を入れるガサツさが
稲敷のいいところ
『地域の情報だけは追うな!』茨城県稲敷市地域おこし協力隊に任命され初日に思ったこと。
こんなことになるとは、つゆほども思わなかった。
平成30年4月2日、水元青年は今日、茨城県稲敷の地域おこし協力隊に任命された。
正直に言えば、彼にとってこれはだいぶ大きな賭けだった。今年の誕生日で27歳を迎える男――もうすでに友人の中には、結婚をし、子供もいるぐらいの年代――が、地域おこし協力隊に一石を投じるのは、大の大人が三輪車に乗って、急な坂道を猛スピードで駆け降りるくらい無茶で愚かな行いだと(個人的な見解にすぎませんのでご了承を)。
なのに、どうして?
彼には目指すべき目標が2つあった。それは小説を書きつづけるということと、出身地である茨城県のために何か還元したいという強い野心。その両方の目標に上手いこと近づくには、今の彼には地域おこし協力隊しか選択肢がなかったのだ。
稲敷は現在、人口減少がとどまることを知らない。
平成28年3月1日には男21,638人、女21,749人、計43,387人いた人口が、翌年の平成29年3月1日には男21,335、女21,407、計42,742人、さらに翌年の平成30年3月1日でも減少を続け、計42,017人と、近年だけでも1年経過するごとに約600人から700人程度の人口流出が起きている。廃校する学校は増え、若手が減り、若手がいなくなれば、活気がなくなり、市が廃れていくのは必然だった。
少しでも力になれることがないか。非力ではあるけれども、筋肉のほぼほぼないこの腕ではあるけれども、運動も特にしていないショッカー同然の雑魚キャラではあるけれども、支えられるものがあるんじゃないかと、水元青年はクラーク博士よろしく、大志を抱いて立ち上がったのだ――。
かくして水元青年は、その重い腰を上げ、冒険の書を書き換えた。
コレは『イナシキノオハナシ』。
稲敷地域おこし協力隊1日目にして思ったこと
と、まあ、だいぶトーンの定まっていない文面で始まった当ブログですが、このブログではまじめ腐った好青年の標本が書くような理路整然としたブログを書くつもりは毛頭ありません。ふざけを基調とした、モダン風の造りで、かつ新築の木の匂いを漂わせ、ジャグジー付き、ウォシュレット完備、大きめの庭にはブランコがあり――といったブログを書いていくつもりなので(もちろん稲敷の情報は発信していくよ!)、そこんところヨロシク。
で、まず初めに思ったこと。
というか、これからのビジョンとして、考えなければいけないことを綴っていきたいと思います。おそらくこれは、2018年現在、地域おこし協力隊として活動している同志、約5000名の有志の方々にも通じるものがあるのではと思うので、ここに記します。
まずは、『情報発信は地域の情報だけじゃだめやね』ということ。
もちろん地域の情報を面白おかしくご紹介していこうとは思っていますよ、絶対に。そこを抜かしたら何のための「稲敷地域おこし協力隊」なんだって怒られちゃいますから。でも情報が地域オンリーに偏っちゃうと、見てくれる人の数が限定的になってしまうとも思うんです。
稲敷について知りたい人、これから住もうとしている人、実際に住んでいる人、観光に行こうと思っている人、ちょっとした用事でふらっと行こうとしている人、それら全員、ぼくらが働きかけなくても初めから「稲敷に興味のある人」なんです。いつかは来るんです、勝手に。その人たちのために稲敷の情報を発信してもあまり意味がないような気がしませんか?
ぼくらが相手にしなくちゃいけないのは、もっと外側、「稲敷に全く興味のない人」、そもそも地名も知らないくらい縁遠い人を引き込まなくちゃならない。そのためにはまじめに地域の情報を発信するだけでは弱い。ならばどうするか? 面白いブログを書く。これは当たり前 (そんなこと言って面白くなかったらどうすんねん)。
あとやるべきことは、地元に根付くという地域おこし協力隊の意義を逆手にとって、全く違う地域の情報を発信していくのはどうだろうかと。そのためには、みんなが知りたい情報、PV数の稼げる情報を追うしかない。
やるならTOKYO。人気アイドルはTOKIO。
幸い、稲敷は田舎ではありますが、東京へのアクセスは悪くなく、大体車で60キロも走れば着いてしまうという利点が存在する。これは使える……。
稲敷×東京×いかれたブロガー=……
そしてガリレオ顔負けの方程式で導き出した解は――。
「東京のイベントに参加して、当ブログで発信していく」
しかし、こればっかしは仕事内の時間では無理なので、休日に東京まで出向いてイベントに参加し、ブログを書くという、奴隷寸前のタイムスケジュールで動かなければなりません。そのうえ地域おこし協力隊の仕事もイベント系が大体を占めるので、土日がつぶれることも多々あり。うーん、課題は山積み。
真似はするな。同志よ。死ぬぞ。
追記
もっと濃い内容のブログ書きたかった。
もっとうまい構成で書きたかった。
3年間続ける自信あんまりない。
でも頑張る。
でも大丈夫!(吉高由里子風)