ライスミルクなるものが稲敷で作られているらしい(前編)
人口減少が叫ばれる昨今(ブログの入りが重い)、私たちにできることは何だろう(いったい何があったというのだろう)。
稲敷も例外ではなく、毎年約700名近くの人口減少が続いている。このままでは4万人いる住民が、何十年後かには(すごいざっくり)過疎地域になり、また何十年後には(オーザック)、人っ子一人いない町になってしまうのではないか。
いやだめだ!(どうした急に)
まず働く場所を設けなければと、調べたところ、稲敷にも働く場所はたくさんあったのです(茶番終わり)。
School×Falm=schoofa(スクーファ)
人口減少のため廃校になってしまった学校を借り入れて、そこで最新鋭の省エネ型LED照明による葉物野菜の水耕栽培(養液栽培のうち、固形培地を必要としないもののことをいう)や、地域に根付いた農産加工品の製造に励んでいる会社。
水耕栽培(例)
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ちなみにこの写真はスクーファで撮ったものではありません。
スクーファで作っているものは、
野菜類では、
フリルアイスレタス
小松菜
バジル
サンチュ
グリーンサニーレタス
農産加工品では、
バジルペースト
と
はて、
ライスミルク……だと?
ライスからミルクが取れるとでもいうのだろうか。そんな馬鹿な話があるわけないと、そうお思いでしょう。そこの奥さん! そうあなた、です。今呼びかけられて驚いた顔をしたあなた。あなたに直接呼びかけています。
このライスミルク。その名の通り、お米から作られます。米の粉末を基本として、それに水を加えた、至ってシンプルな原材料で製造されています。また、一般的には玄米から作られるため、玄米ミルクとも呼ばれているのですが、奥さん、今の説明を聞いてどう思いましたか。
カロリーが少なそう? 正解です。
今ダイエット中の奥さんにはぴったりのライスミルク。100g当たりのカロリーはなななんと、46カロリー。牛乳の場合は67カロリーなので、500㎖飲もうと思ったら、その差は……電卓がないので後で調べておいてください、奥さん。
奥さん、ああ奥さん。奥さん。驚くのはまだ早いのです。
牛乳を飲むとお腹を下す人がいますよね。牛乳を飲むとお腹にガスがたまって、ゴロゴロ雷を落としたり、下痢したり。乳糖不耐と呼ばれる作用なのですが、ライスミルクならそんな心配は無用。米をいくら食べてもお腹を下さないように、ライスミルクはどれだけ飲んでも乳糖不耐にはなりません。
今まで牛乳の匂いが嫌いで飲めなかったというそこの奥さんにも、ライスミルクなら問題なく飲むことができます。牛乳のように舌触りになめらかさはあまりなく、どちらかというとさらりと飲める優しい口触り。
パンケーキにシリアル、ホワイトソースにコーヒーなどなど、牛乳を使用しなければならない機会は多分にあります。ですがそれらもライスミルクに変えることで、牛乳嫌いの人も無理なく飲み食いできるだけでなく、カロリーもオフされるという優れもの。
そこで今回は大盤振る舞い。奥さんのためならえんやこらえんやこら! ふだんなら1リットル六本入りで535円のところ、今日限り、十二本買っていただけた方限定で、なななんと800円! 800円ですよ、奥さん! 今だけ限定! もう買うしかない!
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そんなライスミルク、実はアメリカではとっくのとうに流通していて、日本でも2013年に初めて国内生産されました(ライスオーラ)。
そして、そして、まさかまさかの茨城県稲敷市でもライスミルクが製造されているということで、株式会社スクーファに行ってまいりやした。
こぉはんへぇーつづく。
和田公園をもっと「愛される公園」にするために
稲敷市・和田公園を活気ある公園にする活動として、以前も記事にした和田公園プレイスメイキングが企画・実行されています。
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そんななか、地域おこし協力隊員として自分にも何かできないかと、『七夕笹船祭り』を企画しました。今回のブログではその内容について紹介しようと思います。
『七夕笹船祭り』概要
- イベント内容①
笹船を作って、遊んで、流しちゃおう!
七夕といえば笹、ということで、幼稚園・保育園生を相手に、笹船の作り方をレクチャー。わいわいと楽しみながら笹船を作り、最後には出来上がった沢山の笹船を和田公園近くの霞ヶ浦に流す、という内容。
- イベント内容②
五色そうめんを堪能!
流しそうめんに使う装置を自作(または可能であれば、竹を用意して、地元の方と一緒に作成)し、公園に遊びに来た方々に五色そばを食べてもらう。また、そばを流すために使用した竹の装置は、その後、作った笹船を流すために使用する。
- イベント内容③
みんなで短冊書いちゃおう!
七夕の定番、短冊に願い事を書いてもらう。
またその短冊を残しておくことで、のちにやってくるであろう市外の人に、和田公園の良さ、稲敷の温かみみたいなものを感じ取っていただけるのではないかと考える。
- イベント内容④
天の川を見てみよう!
家庭用プラネタリウムを使用した天体観測。和田公園内にてテントを立て、その中で少人数の天体観測を行う。
イベント内容④に関しては、人口減少対策室の予算の都合があれば、ということで実行可能かどうか今の段階では微妙なところ。しかしながら、それ以外の上記三つについては可能なようなので、特に問題はなさそう。
これからも継続的に和田公園のプレイスメイキングは続いていくようなので、時折このブログでも紹介できればと考えています。
4月にはチューリップが咲き乱れる和田公園
サイクリングロードも完備、自転車乗りにもやさしい和田公園
どうだ!これが!稲敷の和田公園や!!!!
稲敷の名所を小説風に紹介してみた!
「この人ストーカーなの」
と、伊奈帆はつぶやいた。
車に轢かれそうになってその場に倒れ込んだ男を指さし、敷島に抱きつく。
「わたし、こわくてこわくて……」
「は、はぁ……」
今日の敷島は朝からさんざんだった。
ヤンキーに絡まれ、殴られ蹴られ、彼女には逃げられ、美少女に助けられたかと思いきや、会った時から訳の分からないことばかりしゃべり続けている。その腕には、リストカットらしき傷跡があった。
とにかくこの場から一刻でも早く逃げ出したい。敷島の本音は、そのやるせなく口の開いた顔からにじみ出ていた。
「とにかく! 無事誰もケガすることなく一件落着したんだから、今日のところはみんなにこやかに解散しよう! にっこにこー!」
「いや、まだ話さなきゃならねえことがある!」
屈強な男は、九死に一生を得た直後だというのに、少しも弱みを見せない強い語気でいった。
「伊奈帆、その男はだれだ!」
「なんでストーカーさんに教えなくちゃいけないの?」
「はあ? ストーカー?」
「ここ最近、ずっとうちの近くでうろうろしてるでしょ!」
「そりゃあ、お前からの連絡が途絶えて、なにかあったんじゃねえかと心配になって……だな」
「信じないで!」
蚊帳の外にいた敷島の腕をつかむ伊奈帆。
「初めは郵便受けに手紙が入ってて、私宛に。でも消印もなにもないから、直接郵便受けに入れたんでしょう。どうやって私の家を知ったの?」
「どうやっても何も……」
屈強な男に、初めて狼狽が見えた。
「私、知ってるんだから。あなた、警察に追われてるでしょ!」
「あ?」
「窓から見てたの。しつこくやってくるあなたを。そうしたら、あなたの後ろを追いかけてくるスーツ姿の人たちが」
「サツ?!」
男の狼狽が焦りに変わっていく。
「たしかに、追われる理由はあるにはあるが、お前をストーカーしているからではねえ。そんな女々しいことをするような奴に見えるか?」
男はなぜか敷島に問うた。敷島は彼の膨れ上がった二の腕を見て、首を横に振るしかなかった。
「ところでお前は伊奈帆のなんなんだ?」
男の視線が完全に敷島を捕らえる。
「ぼ、ぼくは……」
「私のボディーガード。警察官Aよ」
「A?!」
「あそこの電柱の影にはBが。整体院のなかにC。ほかにもたくさん、ストーカーさんを捕まえるためにやって来た警察官がいるわ。もう逃げられない」
屈強な男が一歩後ずさる。伊奈帆に背中を押された敷島が、よろめきながら前へ進む。と同時に、男が全速力で駆け出した。その大きな図体には似合わず、初動の速さはピカイチで、あっという間に姿が見えなくなる。
「一体全体なんだってんだろう?」
「分からないことだらけ?」
「どこからどこまでが本当のことで、嘘なんだ?」
「周りに警察官がいるってところは嘘。あの人がストーカーしてるっていうのは本当」
「ううん。警察官は本当にいるよ」
「え?」
今度あっけにとられたのは、伊奈帆の方だった。
「僕が警察官だ」
引きずる足をかばってもらいながら、敷島は家まで戻ってきた。車で家まで送ると提案したが、伊奈帆は「面倒ごとを増やしたくないから」という謎発言で断った。代わりに、「生命力を感じられる場所に行きたい」との指示を受け、敷島は車を転がした。
小野川を超え、新利根川を越えた先に、新利根共同農学塾農場が現れる。広い草原に放たれた牛が、のびのびと。
草を食べる牛、寝そべる牛、尻の匂いをかぐ牛、様々な牛が大草原に放たれている。せせこましく人間であることに疑問を感ぜずにいられなかった。
「わたし、もう少しだけ、ここにいたい」
地面にしゃがみ込む伊奈帆に、敷島は声を掛けることができなかった。
『新利根共同農学塾農場』
電話: 0299-79-2024
この物語を初めから見たいならこれを読むべし!
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2018年『いばキャラ祭り』にいなのすけが参戦!
負けられない戦いがある。
マスコットキャラクターもマスコットキャラクターなりに苦悩していて、「誰々よりも不人気だとマスコットキャラクター界から抹殺される」なんてうわさもちらほらと耳にする。
茨城県稲敷市のマスコットキャラクター・いなのすけは、そんな醜い世界とは無縁の場所で戦い続けてきたが、4月29日(日)に水戸で開かれた『いばキャラ祭り』においては、彼のずっと抑え続けてきた血を湧き上がらせるだけの戦いが巻き起こっていたので、もうどうすることもできなかった。
しかし、そこはマスコットキャラクター。殴り合いで戦いの勝者を決定するには、血なまぐさすぎるため、雌雄を決する種目は――
椅子取りゲーム
ここで、椅子取りゲームがわからない坊やたちのために、懇切丁寧な説明をウィキペディアさんがしてくれるよ。
- 椅子取りゲーム
椅子を外側に向け円状に配置し、その周りに参加者が立つ。
椅子の数は参加者の総数よりも少なくする。
音楽と共に参加者は椅子の周りを回る。
音楽が止められると即座に椅子に座る。この時に椅子に座れなかった参加者はそこで負けとなる。
椅子の数を減らしていき、最後まで椅子に座っていた人の勝ち。
一見楽しいだけのゲームに思うことだろう。否、今大会において「楽しい」は初めから除外されている。音に合わせ楽しく踊り出すゆるキャラを、手を叩きながら楽しそうに見守る子どもたちは、何も知らなかったのだ。ゴングがずっとなり続けていることに。
いなのすけは第三グループに割り当てられた。ほかにも、とちまるくん、ポンデライオン、みとちゃん、いもぞー、もりすけ、千姫ちゃま、ひぬ丸くんと強豪ゆるキャラがしのぎを削り、すくない椅子をかけて勝負する。それ以下でもそれ以上でもない、正真正銘、まっとうな勝負だ。
有力候補の筆頭は、ポンデライオンと、いもぞーだ。彼らはさも椅子取りゲームをするために生まれてきたかの如く、下半身の稼働力があり、尻が人間然としているため、他のどでかいお尻のマスコットキャラクターよりも座りやすい設計をしていた。しかし逆に言うと、どでかい尻をしているマスコットキャラクターのほうが、面積が広いため、簡単に椅子に座れるかもしれない。どう転ぶのか、始まってみないと勝負の行方は分からなかった。
初戦、四つ置かれた椅子の周りに、七人のマスコットキャラクターが並ぶ。その姿は圧巻だった。互いが互いに睨みを利かせ、相対するマスコットキャラクターはもはやマスコットではなく、一人の武士。男の中の男だった。
ゆるゆると動きながら、距離感を図るマスコットキャラクターたち。外目には激しい野心に満ち溢れているとはだれも思わないだろう。
いざ、戦いの火ぶたが落とされた。
音楽に合わせながら、ふりふりと尻を振るいなのすけは、謙虚ながらも、いもぞーの後ろを追いかける。いなのすけの後ろを追うのは、人一倍頭のでかいとちまるくん。その異様な存在感がいなのすけの意識にどのような作用を及ぼすのかは計り知れないが、今のところいなのすけに変化は見られない。楽しそうに歩くばかりだ。
音楽はなり続ける。そのとき――。音楽が止まった。
その刹那、いなのすけは思い出した。
椅子取りに支配されていた恐怖を。
いばラッキーに囚われていた屈辱を。
いなのすけは今大会に、非常に強い思いで臨んでいた。
昨年のいばキャラ祭りで、いなのすけは涙をのんだ。仁義なき椅子取りゲーム。諸行無常の響きあり。泣くまで待とうホトトギス。頂点に立つものは、全てのマスコットキャラクターから崇拝され、一神教の神の座を与えられる(うそだよ)という、今大会で、いなのすけは、国体マスコットキャラクター・いばらっきーに敗退を喫した。
椅子に座ったのはいなのすけだった。だから彼は完全に勝ったと、心の中でほくそ笑んでいた。デスノートの夜神ライト的な笑みだった。しかし、実際に勝利していたのは、いばらっきーのほうだった。彼はいやらしくもいなのすけの尻に手を指し伸ばし、Lよろしく、完全勝利したといなのすけに勘違いさせ、泳がせ、自身の勝利をもぎ取ったのだ。
それからというもの、いなのすけは寝つきが悪くなり、普段は十時間眠れるところ、八時間くらいしか眠れない体になってしまった。いばらっきーのことを考えるだけで、負けた悔しみが蘇り、全身に冷や汗をかきながら悶える日々が続いた。
時間を作って椅子取りゲームの練習に励むいなのすけ。スクワットは何百回やったかもわからない。打倒いばらっきーを近い、血を飲む努力をし続けてきた。すべては、2018年のいばキャラ祭りのために――。
音楽がやみ、ゆるきゃらが一斉に動きを止める。中央に置かれた椅子に群がり、おしくらまんじゅうを始めた。乗車率200パーセントの満員電車に匹敵する密集で、たちまちにゆるきゃらの団子が出来上がった。
いなのすけはというと、写真の通り、姿を確認することもできない。もみくちゃにされながらも、必死に抵抗しているのだろう。いばらっきーの不敵な笑みを思い出して。
徐々にキャラクター達がはけていく。明らかになっていく勝者と敗者。いなのすけはというと……。
察してほしい。彼も彼なりに頑張ったのだ。スクワットのせいで筋肉痛になっても。ベストコンディションでは決してなかった。それなのに弱音もはかず、雨にも負けず、打倒いばらっきーを心に誓って一所懸命頑張ったのだ。
負けるな、いなのすけ。いくんだ、いなのすけ。いのちをだいじに、いなのすけ。
寂しそうに俯くいなのすけに、僕たちができることは、一体何なんだろう……。
追記
久々にふざけた文章なので
書いていてすごく楽しかったのです
田舎と都会の違い――街灯問題――
つい先日、自宅から和田公園まで自転車を走らせた。片道十五キロ。いい運動になると、軽い気持ちでペダルを漕いだが、何やら様子がおかしい。
とてつもなく暗いのだ。それこそ幽霊でもでてきそうな。
千葉の市川にいた時じゃ考えられないほどの暗闇だった。街灯もほとんど置かれておらず、自転車のライトがなければ到底一人では進めないほどの闇。
人の思い込みとは面白いもので、今まで幽霊なんか見えたこともないのに、草木がざわめくだけで「うひゃひゃい」と叫んでしまう。
車の走行ライトならまだましに思える道でも、自転車のライトでは走行不可能になるほど。幽霊のでてきそうな道に、何度屈しそうになって来た道を帰ろうと踵を返したことか。これがライトも何も持ち合わせていない普通の歩行者だったなら……。ぼくなら日が暮れて暗くなった時間に外に出ようとは考えないだろう。
街灯の少なさは和田公園も同様だった。昼間はあんなに景色がよくて居心地の良い場所でも、一度暗闇に包まれると、幽霊の巣窟になってしまう。そして、和田公園では暗闇以外にも恐ろしい事象が発生した。何者かの声が聞こえてきたのだ。はじめその声をきいたぼくは、驚くよりも「どうして声が?」という疑問でいっぱいだった。
辺りを見渡してみても誰もおらず、あるのは暗闇ばかりだった。もう一度耳を澄まして、声をきく。
「もおー」。
完全に人の声ではなかった。
ウシガエルだった。
ウシガエルが鳴き続けていた。
合唱できるほどたくさんのウシガエルが草木に身を潜めていた。それはそれで怖くて、でも幽霊でないことに安堵して、和田公園近くのサイクリングロードを再び走る。先にいったところに、車が一台とまっていた。車種には詳しくないので、何の車かはわからなかったが、怪しい趣がプンプン丸だった。ちょうどゴールデンウィーク始まりだったので、深夜釣りにでもきているのかと周囲を見渡してみても、人っ子一人いない(いたら怖くて逃げだすけれど)。怪しい。怪しすぎる。
和田公園の中にも車が一台置かれていた。ガラスはスモークで中が見えない。怪しい。怪しすぎる。
自宅を出発して、和田公園に着いたのは11時近く。そんな時間に公園へやってきていったい何をするというのだろうか。あやとりだろうか、それともポケモンGOだろうか。
分からないが、何の罪がなくても、暗闇のせいで犯罪者扱いされてしまうのもかわいそうな話だった。
プレイスメイキングで和田公園を「人を呼び込むため」の公園にするなら、この街灯問題にも着手する必要があるのかもしれない。さすがに深夜帯に自転車を転がす愚か者(自虐)はいないにしろ、夜の七時近くですっかり日が落ちる冬場なんかは、街灯が無くては人も寄り付かないだろう。怖いし、怖いし、怖いからだ。
ここで一句
田舎はね
たくさんいるよ
ともぞう心の俳句
プレイスメイキング――公園づくりが田舎を救う?――
地域に根付くために必要なこと。
居場所をつくる。
千葉の市川にいたとき、驚いたことは、その駐車場の多さだった。スーパー、靴屋、その間に駐車場、ラーメン屋、バイク屋、その間に駐車場。大人たちが使いやすいように空間を創造するばかりで、子供たちが遊ぶための居場所は小さな公園に限られていた。
東京メトロ東西線の高架下には保育園が造成された。上では電車がひっきりなしに通過し、両サイドには排気ガスをまき散らす自動車が走行。立地がいいかと言われれば微妙なところで、それもこれもすべて原因は、大人たちが利益重視で、狭い土地にばかすかと建物を建てていったからに他ならない。
クレヨンしんちゃんの映画『クレヨンしんちゃん ガチンコ! 逆襲のロボとーちゃん』でもこんな描写がある。野原しんのすけの父親・ひろしはぎっくり腰になってしまい、家族から「邪魔だ」と邪険に扱われる。唯一の居場所を追い出されたひろしは、近くの公園のベンチでうなだれていた。すると、そこには同じような境遇で俯く男たちがいて……。
人にとって居場所はものすごく重要なのに、ものすごく軽視されている。
4月24日に行われた和田公園プレイスメイキング(簡単に言うと、稲敷浮島にある和田公園にちょっとしたエッセンスを加えて、人を呼び込む公園にしちゃおうという企画)の会議で、『居場所』の重要性を再認識した。今回のまじめ腐ったブログでは(不本意)、プレイスメイキングについて紐解いていこうと思う。
〇プレイスメイキングとは
プレイスメイキングはアメリカでうまれた「居場所づくり」を指す言葉。しかし、明確な解釈が存在せず、定義もひとつに限られているわけではない。「すべての人々が住んでいる地域において、自分自身を見つける居場所に変換していく方法」と語るのはLinda. H Schneekloth。研究者の三友奈々は「日常の生活場面をより実在感のあるものにする心的価値をつくり、居場所としての満足感を高め、生活の質を高める計画概念」であると語り、Jay Walljasperは「安全で活発に利用され、コミュニティの社会的活力及び経済を活性化するための触媒となり得るような公共空間を創出するために、コミュニティと協働すること自体もその言葉に内包する」と語っている。
簡単に言えば、「快適な居場所を作っちゃえばいいんじゃね? したらみんなハッピーしょ!」ってことだ。
〇プレイスメイキングの意図
プレイスメイキングは決して、人を呼び込むために行うものではないことを理解しなければならない。ただ人を呼び込むためならド派手なイベントを催せばいいだけだし、有名な芸能人でも呼べば簡単に解決してしまう話だ。しかし、プレイス=居場所を、メイキング=作るのだから、一過性であってはならない。毎月一定数の来客が見込め、その場所を魅力的に感じ、常に居たいと思わせる空間を作る。第一に優先されることが商業目的ではあってはならないし(市川のように)、利用者を第一に考えた、誰に対しても(野原ひろしのようなぞんざいに扱われる父親にも)優しい居場所を創造することを主眼に置く。
〇プレイスメーカーとは
プレイス(居場所)をメーカー(作る人)する人を指す。愛着の持てる居場所作りに邁進し、利用者に唯一無二の居場所を提供するプレスメイキングの専門家のこと。
〇プレスメイキング成功事例
・中町公園の『FLAT PARK』
四日間限定で厚木市・中町公園に置かれたのは簡易的な椅子とテーブル、人工芝の絨毯に、本棚のみ。
普段の中町公園は子供の遊ぶもなく、公園と呼ぶよりかは広場に近い様相。しかし上記に挙げた小規模な設営で人が集まり、コミュニティが作られた。
・米国ニューヨーク市『ブライアントパーク』
約4500脚の可動式椅子を設置し、六か月の飲食店を経営させたところ、勝手に人が集まり、犯罪多発地区だった公園を賑わせた。
・池袋グリーン大通りの『GREEN BLVD MARKET』
洒落た出店を出し、ハイカウンターでは立ちながらビールを飲むことができる。ちょっとした設営でも人が集まり、賑わいを見せる。
〇稲敷浮島・和田公園でのプレスメイキング考案
人口減少が叫ばれる稲敷だが、良スポットは数え切らないほどたくさんある。和田公園もその一つで、近くには霞ヶ浦が流れ、緑は多く、生き物たちもたくさん住んでいる。今回、この和田公園を活用して町おこしできないかと考え、プレスメイキングという形で会議が開かれた。
・ターゲット
霞ヶ浦周囲を走る自転車乗り
地元住民の方々(特に親子連れ)
・自転車乗り向けの案
自転車を置くためのラックを設ける
入りやすい看板を作る
走行に適した地盤づくり
霞ヶ浦を走行する自転車乗りのために給水ポイントを設ける
空気入れなどを無償で提供する
・親子連れ向けの案
イベントを企画、運営する
常に活動しているのをイメージづけるため、和田公園専用のフェイスブックを作り、運営する
レジャーシートを置き、座れるスペースを作る(ベンチや椅子だと古くなった時に再塗装やねじの交換が必要になるため、レジャーシートを活用。また、レジャーシートのほうが、首を回さずに周囲を見渡せるため、公園の景色を眺めるのに適している)
遊具には頼らない、運営のいらない遊びをつくる(テントを使用した遊び。夜なら、懐中電灯一つ入れておくだけでも、その明かりで遊ぶことができる)
定期的に、竹とんぼや、ゆらゆらうごくやじろべえ、缶ぽっくり、紙鉄砲、ぶんぶんごまなどアナログで自作できる遊びを、地元の子供たちにレクチャーする
両者向け
チューリップだけではない畑の使用方法を考える
まだ計画は序盤も序盤で、完全始動にまでは至っていないが、人が集まり意見を交わすことで今まで見えなかった問題にも着手することが可能になり、一歩、また一歩と、よりよいまちづくりのため邁進できるだろう。
和田公園
江戸崎にある『甲らく屋』を小説風に紹介してみた!
美由紀は、まっくろくろすけを生成する達人として名が知れ渡っていた(町内レベルで)。
ひっくり返せばそこにいる。ハンバーグ、生姜焼き、餃子、焼肉etc。焦げという名のまっくろくろすけは美由紀をこよなく愛し、美由紀はまっくろくろすけを忌み嫌っていた。
いくら母親から教わっても、注意不十分で料理していること自体を忘れ、挙句の果てに「お腹がすいたなあ」と外に出かけ、外食するという始末。その間、火はつけっぱなし。軽いボヤ騒ぎに発展しかけたが、事態に気付いた母親が、生成されるまっくろくろすけの成長を止めたため、天井にまっくろくろすけの大ボスが出来上がっただけで、けが人はいなかった。
それからは「もうなにもするな!」と半ば強制的にキッチンから離され、美由紀は料理したくてもできない環境に置かれてしまった。クックパッドを眺めては、涙を流す日々が続いた。あの憎き、まっくろくろすけさえ、現れなければ……。
美由紀は考えに考えた。まっくろくろすけを生成しない方法を、だ。
料理をしなければ、まっくろくろすけは現れない。なら料理をしなければいい。しかし、料理はしたい。美由紀にとって、料理とまっくろくろすけは表裏一体、紙一重、神羅万象、しゅらしゅしゅしゅ、焼肉定食、バンバンジー。切っても切り離せない絆で結ばれた兄弟のような関係だった。
そうして思いついた。料理をする場所は、何も自分の家でなくてはならない法律もない。
料理教室に通おうと思ったのは、そんな経緯からだった。
料理教室初日、美由紀はどきどきしながら教室の扉を開いた。学生時代に戻ったようなワクワク感と、不安。あの子と一緒のクラスだろうか。新しいクラスで仲良くやっていけるだろうか。楽しく一年過ごせるだろうか。扉を開けて、美由紀は唖然としてしまった。
その料理教室には、すでに男性が八名ほどいた。料理教室は花嫁修業の一環として開かれていると思い込んでいた美由紀は、まず初めに「男、多っ!」と声を漏らしてしまった。初手としては大失敗。クラス替えなら初日にして孤立。男性が多いことを批判的なイントネーションでつぶやいてしまったため、中にいた先住民(男性たち)から冷たい視線を浴び、美由紀はひやひやしながらキッチンの方へと歩を進めた。
初日に作る献立は、「豚キムチ定食」だった。定員十名のうち、八名が男性、一名が美由紀、もう一人は急用で欠席(どうやらこの欠席した人は女性だったようで、美由紀は歯がゆい思いでこぶしを握りしめた)。男性たちは終始無言だった。料理教室の先生が説明する通り動き、淡々と作業的な料理が続いていく。美由紀は葬式のような重い空気に耐えられなくて、鼻歌を唄ってみた。米米CLUBの『かぜになりたい』。その一見渋い選曲に男たちは度肝を抜かれ、一瞬だけ手が止まったが、重苦しい雰囲気が一変することはなかった。
そういったわけだから、出来上がった豚キムチは、案の定、全く味がしなかった。無言で作られた豚キムチの気持ちになって、美由紀は心底哀しい思いで涙をこらえた。本当はもっときれいなお姉さんに作ってもらいたかっただろう。すべすべな手で、優しく持ち上げられ、キムチとともに炒められたかっただろうに。
その時、一人の男性から声を掛けられた。
「『甲らく屋』の豚キムチには到底かなわないですよね」
今まで「無言の男たち」というひとくくりのグループで彼らを見ていたため、一個体にまで注目をしていなかったが、声を掛けてきた男性は、優しい雰囲気のある好青年だった。敷島大介その人だ。
「江戸崎にある、あの?」
「そうです、ご存知ですか?」
ご存知も何も、美由紀はあの周辺に住んでいて、毎日のように通い詰めているほどの常連だ。思い出してまたお腹がすいてしまう。
『甲らく屋』。
弾力のある豚。
ニラは新鮮。
キムチの辛みもちょうどいい。
しかしこの定食の主役は豚でもニラでもキムチでもなく、卵だ。
一口食べただけで卵の旨みが馬鹿ほどに口に広がる。触感はふんわりふわふわ、羽毛布団以上綿あめ以下ぐらいのふわふわ感。しかし味はふわっとしておらず、直球ドストレートで卵の味が舌を突き刺してくる。卵がおいしい店は何を食べても旨いという根拠のない持論を展開させると、この店のごはんも何を食べても旨いのだろう。事実、美由紀は前にもこの店に魚をたべにきたことがあるが、(詳細は覚えておらず、確かほっけかサバの塩焼きか何かだったと思う。)旨みの根源であるつややかな脂が箸を入れるたびにしみ出して、その様子だけで、これでもかとよだれを垂らしたものだった。
見た目にも気を使っているのが好印象だった。小鉢に入れられた漬物、豆腐、ひじき、お椀の味噌汁、そのどれもが必要不可欠で腐れ縁の仲間だとでもいうようにフォーメーションも崩さず配置されている。しかもどれも味がしっかりしている。ひじきにいたっては、太さが普通のひじきの二、三倍はあるだろうか。丁寧に丹精込めて作っているのが伺えて、美由紀はそれだけでうれしくなった。作り手も、食べる人の笑顔を想像して調理したのだろう。
「これじゃあ、どれだけ練習してもあそこの店ほどおいしくはできないだろうな」
敷島のつぶやきに、美由紀は頷かざるを得なかった。
「本当におれのこと知らないの?」
美由紀に声を掛けてきた男はしつこく聞いてきた。あの料理教室にいたのだろうか。敷島以外の七人は、顔にもやがかかったように思い出せない。いたような気もするし、いなかったような気もする。それとも他の場所で……。
「ま、いいや。とりあえず式の予定だけ決めてから帰ろう」
「し、式って、まさか」
「結婚式に決まってるだろ。みなまで言わせるなよ」
男は強引に美由紀の腕を引っ張った。
カスミ店内のコーヒーショップに落ち着くと、男はまた口を開けた。
「敷島はもう知ってるんだ」
「何の話ですか?」
「おれたちが結婚することさ。あいつにはスピーチをしてもらおうと思っていて」
何が起きているのか、全く分からない。美由紀は自分一人だけが世間から切り離されてしまった気がして、『風になりたい』を口ずさんだ。例のごとく、重苦しい雰囲気が一変されることは決してなかった。
『甲らく屋』
営業時間:11時30分~14時30分, 17時30分~0時00分
定休日:火曜日
電話: 029-892-1266
この物語を初めから見たいならこれを読むべし!
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